NGOミャンマー駐在員のハリキリノート

ミャンマーのタウンジーという町で、国際協力をやっています。NGO活動、ミャンマーあれこれ、国際結婚育児ネタなど

映画『僕の帰る場所/passage of life』レビュー・撮影秘話

ミンガラーバー(ミャンマー語でこんにちは)

 

ミャンマー好きの間で話題になっている映画 

『僕の帰る場所/Passage of life』

 

passage-of-life.com

 

私もこの映画を見たのですが、本当に素晴らしい映画で大ファンになってしまい・・・ 

所属する「地球市民の会」に「ミャンマーの映画だから、ミャンマーとかかわりがある当会がやるべき!」と申し出て、監督とプロデューサーさんを佐賀にご招待してイベントを開催してしまうほど。

 

この映画の何が素晴らしいのか、 レビューしていきたいと思います。また、イベントで聞いた撮影秘話も公開してしまいます。

まだ映画を見ていない方も、ネタバレはありませんので、安心してお読みください。

 

 

こんな映画、今まで見たことない!

この映画の特徴を簡単に書くと・・・

・日本・ミャンマー合作映画

・日本に生活するミャンマー難民の家族を描いた物語

・藤元監督は、 この作品が初めての監督作品

・ほとんどの役者が素人

・兄弟2人(6歳と3歳)とお母さんは本当の家族

・お兄ちゃんの演技がすごくて、俳優賞もとっている。『誰も知らない』の柳楽優弥の再来などと評価されている。

・弟は映画の撮影とは気づいておらず、写真を撮っていると思っていた。

・「まるでドキュメンタリー映画のよう」と評されるように、めちゃくちゃ自然。

 

難民の話ということで、いわゆる「考えさせる系」の暗い感じの映画なのかな・・・と思っていましたが、まったく裏切られます。いい意味で。

ミャンマーに興味がある人だけでなく、ぜんぜん関係ない人が見ても、すごく味わえる映画です。

 

とりあえず、言えるのは「こんな映画、今まで見たことない!」ということ。

「あの映画はすごかった!」と、何年も語り継がれる映画になること間違いなし!と思います。 

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東京上映を見に行ったときの写真。監督からサインもらいました。

 

もうね、私だと上手く言語化できないので、友人の旦那さんがFBに書いていた感想をシェアします(許可もらい済)

長いですが、これを読むと、映画を見てみたくなりますよ。

(本当はもっと長いので、全文読みたい方はこちらから。旦那さんは鍼灸マッサージ治療院をされています)

 

この「僕の帰る場所」という映画はミャンマーが危険ということで日本に移住してきた家族の話。

生まれてから長く日本で暮らすためミャンマー語がほとんど話せず日本語が流暢な兄弟、とミャンマーから日本に来たその両親。

母は精神的にまいっていて心療内科を受診。難民申請が下りずオーバーステイとして父は当局から目をつけられている。

祖国ミャンマーに帰りたい母と、日本に残りたい父。

結局母と息子二人はミャンマーに帰国し父は日本に残るという選択をします。ミャンマーに渡った兄弟はミャンマー語がほとんど話せないし環境が日本と大きく異なるミャンマーに戸惑い、お兄ちゃんは日本に帰りたい、お父さんに会いたい、と言います。

 

社会派作品とか在日外国人の問題を描いている、などの触れ込みでしたが、私はとにかく映画作品としての特殊さというか挑戦というか、こういう映画を作ってしまったのだという感想が一番でした。

限りなくドキュメンタリー映画に近いフィクションと称されていますが、他では簡単に真似できない映画になっていると感じたのです。

 

まずこの作品、撮影環境が常識を外れています。 

登場人物のほぼ全てが素人で演技初挑戦。主人公家族のお母さんと息子二人は本当の家族。お父さんは別人。家族の役名は本名と同じ。しかも息子二人は日本で育ったので日本語がネイティブ。お母さん役の人は本当にミャンマーに帰りたいと願っているそう。

撮影当時、弟はわずか3歳。演技も何も台本が読めない状態だった。弟の出演シーンはずっとカメラを回して台本の様に話す(動く)ように仕向けて撮り続けていた。

このような状況でよく一つの作品に仕上げたと思います。

 

次に撮影手法も独特です。とにかく表情のアップが多いのです。

登場人物の表情を追っかけてばかりであまり引きの画が出てきません。推測ですがプロの俳優は動きで演技をしますが登場人物の多くが素人のため、表情とセリフに集中せざるを得なかったのではないでしょうか。

 

必要と思われるカット割りが無い場面もありました。

ミャンマー人の友人と今後の事を話し合うシーンではずっとカメラを回したままで話している人物の顔にそのつどカメラを向けています。頻繁にカメラを左右に振ると見る方は酔ってくるので、通常はカット割りをして話している人の正面を撮影していくと思うのですが、カメラを止めることなく横に画面が動いていきます。これも登場人物が素人のためカットで会話を途切れさせると続かないと踏んだのかもしれません。

お兄ちゃんが転校するときのお別れ会では同級生からもらったプレゼントで顔が隠れてしまっていてもそのままカメラを回し続けています。お別れの言葉が恥ずかしくて出てこないシーンなのですが表情が隠れている。このようなことは映画でもテレビドラマでも見たことがありません。

このように「え、こんな撮影するの?!」と内心驚いていました。

 

状況説明もほとんどしません。

ミャンマーが危険で日本に逃げてきたということですが、それがどの時期なのかという説明はほぼありません。ミャンマーの実社会では現在ロヒンギャ問題がありますし、軍政からの民主化、国民選挙、多民族問題など色々な要素がありますが、どの時期で何が危険だったかを詳しく描いていないのです。

また日本の場面でも「外人は消えろ!」といった迫害される描写もなく、入国管理官は確かに冷たい演出ですが強制的に捕まえるとか暴力をふるうといった場面はなく、どちらかというと「規則で決まっているから守ってもらわないと困るのでね」と淡々と業務を遂行している感じ。日本での生活が極貧で苦しくて仕方がないという感じもありませんでした。

 

全体を通して恐ろしく淡々とまた異常にリアルに作品は流れていきます。

日本で迫害を受けて苦労したという場面がほとんどありません。家族を助けてくれる日本人もミャンマー人もいます。結局お父さんは日本に残るので強制送還されることもない。お兄ちゃんが小学校でいじめられるようなこともありません。

ミャンマーに舞台を移しても、兄弟はミャンマー語が話せなくてとても困るような場面もほぼなく。お兄ちゃんが家出をするも、大冒険があるわけでもなく。お兄ちゃんが日本とミャンマーどちらが自分のルーツなのか悩むようなところもなく。

 

実際の日常ではそれほどドラマチックなことは起きないし、環境が変わってもそれなりに人間は慣れてしまう、ということを見せられた気がします。普通に考えれば、もっと日本で在日ミャンマー人が苦労するシーンを入れて、ミャンマーでは命からがら脱出したエピソードを描き、ミャンマーに帰って兄弟が大きく成長する場面を入れるのではないでしょうか。

 

イベントで聞いた撮影秘話

最初に書いたように、 監督とプロデューサーをお招きして映画イベントを行いました。

佐賀にある素敵な映画館シエマさんに、映画公開の日を私の一時帰国時期と合わせていただきました!

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トークイベントチラシ

 当日はたくさんの人たちにお越しいただきました。

いつもイベントをすると、地球市民の会の関係者とか、いつも支援してくださっている方がたくさん来てくれるのですが、新規の方はなかなか集まらないという悩みがありました。

でも今回は、映画イベントということで、映画好きの方と出会えてよかったです。

 

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会場いっぱいのお客さん

1時間という時間の中で、いろいろな撮影秘話を聞くことができました! 

印象に残ったものを紹介します。

 

お母さんは仏教徒だけど、お父さんはキリスト教徒という設定がある。教会に行くシーンも実はあったが、カットした。お父さんはカチン族という設定。お父さんの実家はカチン族風の建物で、わかる人が見ればカチン族とすぐわかる。

 

この映画で何を伝えたかったのか?という質問に対して監督の回答。

「伝えたいとかではない。映画のモデルとなった兄弟の話を聞いて、兄弟たちにミャンマーまで会いにいった。ミャンマーに適応できないと聞いていたけど、会いに行くと元気に過ごしていた。ミャンマーに戻った兄弟は、どういう風に変わっていったのか?映画を撮ることで、気持ちの変化を追いかけて見たいと思った」

 

ミャンマーでの撮影時は、お役人さんがついてくる。変なところを撮影しないように。

ミャンマーの鉄道駅は普通は撮影禁止なんだけど、役者が駅のほうに行ってしまって、駅で撮影せざるを得ない状況になってしまった。お役人さんにプロデューサーが説明したところ、お役人さんが「これから1時間、駅長と俺はミーティングをしてくる。そのあとは、わかるな??」とカッコよいところを見せてくれた(1時間以内に撮影を終わらせろということ)。

1時間の撮影は、監督とカメラマンと役者のみの最低限の人数で実施。その間、残りのメンバーでは、駅の橋の上でダミーの撮影を、わざと騒がしく行った。

 

他にも、ここには書けない裏話もたくさん聞けました。イベント参加者の中には「映画よりも裏話のほうが面白い」と言った人も・・・(笑) 

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左から來河プロデューサー、藤元監督、鈴木

  

映画の最新情報はこちらから 

自由に映画を撮れなくなると困るので、この映画にはスポンサーもついていないそうです。

DVD化はされない予定で、公式上映が終わった後は、学校で上映したり、自主上映したりするしか見るチャンスはないみたいです。

いろんな映画賞を受賞していますが、商業ベースの映画ではないので、でかい映画館で全国一斉公開!なんてことはできません。

口コミで、どんどん共感者を増やしていくしかありません。

 

こちらから情報チェックできます。

passage-of-life.com

 

ミャンマーに関わっている人も、そうでない人にも。いろんな方にオススメしたい映画です。

 

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