NGOミャンマー駐在員のハリキリノート

ミャンマーのタウンジーという町で、国際協力をやっています。NGO活動、ミャンマーあれこれ、国際結婚育児ネタなど

バースデードネーションでファンドレイジングをするコツ・攻略法を研究!

ミンガラーバー(ミャンマー語でこんにちは)。

NPO法人地球市民の会のミャンマー駐在員、鈴木亜香里です。

 

バースデードネーションという言葉をご存知でしょうか?NPO関係者やファンドレイジングをやっている人はご存知でしょうが、それ以外の方は「何それ?」という感じかもしれませんね。

NPOが資金を集めるにあたり、バースデードネーションはとても面白い方法なのですが、日本でまだ使いこなせている団体はほとんどないと感じています。

 

今回は、NPO内部の人の目線でバースデードネーションの攻略法を書いていきたいと思います。ざっと検索したところ、バースデードネーションについて突っ込んで書いているネット情報は今のところありませんでした。当会もまだ模索中なのですが、模索の様子をさらけ出していきます。NPO関係者はもちろん、関係者以外の方にも「なるほど」と思っていただけるかなーと思うので、ぜひご一読ください。

 

バースデードネーションとは

まずは、バースデードネーションについてまとめましょう。

バースデーケーキ

バースデードネーション

誕生日に寄付を集める方法

バースデードネーションを直訳すると、「誕生日寄付」です。誕生日寄付というと、「自分の誕生日に寄付をして徳を積むことかな?」と思ってしまうかもしれませんが、違います。「今日は私の誕生日です。私に何かプレゼントをくれる代わりに、○○に寄付をしてね」と呼びかけて寄付を集めることを言います。

 

Syncableというバースデードネーションに力を入れたプラットフォームがあります。Syncableを使って、どなたでも簡単にバースデードネーションを実施することができます。

syncable.biz

 

クラウドファンディングとどう違うの?

バースデードネーションは、最近話題になっている「クラウドファンディング」の一形態と捉えていただいて良いと思います。ただ、クラウドファンディングと違う点もいくつかあります。

 

プロジェクトがなくても資金集めができる

クラウドファンディングだと、「○○をしたい!」という目的があり、その目的のためのお金を集めるイメージです。

バースデードネーションの場合は、プロジェクトのためではなく、団体のために寄付を集めることもできます。「僕が応援している○○団体に寄付します」という感じです。ざっくりとしててもOKなんですね。

 

リターンがない

クラウドファンディングだと、寄付に対するリターン(お礼の品)がついていることが多いです。お礼メール、報告書、団体のオリジナルグッツなどなど、魅力的なリターンを準備して関心を高める方法をとっていますね。中には、リターンなしの純粋な寄付というものもありますが。

バースデードネーションの場合は、リターンの設定はありません。「お誕生日プレゼントとしての寄付」ですからね。

 

団体の中の人じゃなくても資金集めができる

クラウドファンディングをする場合、ほとんどが団体の代表や内部の人が発起人となって資金集めをすると思います。

でも、バースデードネーションは、団体の中の人じゃなくてもできます。もちろん団体の代表やスタッフなどの中の人がやってもいいのですが、ボランティアさんがやったり、ちょっとだけ関わりがあって応援している人や、団体の中の人の友人がやることもできます。「私の友人の○○さんが頑張っている団体に寄付したい」みたいな感じですね。

実際のところ、中の人が発起人となることが多いのかなと思います。バースデードネーションは、まだ日本では歴史が浅い方法ですので、馴染みがない方が多いのかなぁと思います。

 

バースデードネーションの可能性

NPO団体の中の人としては、バースデードネーションをどんどんファンドレイジングに活用していきたいと思っています。もちろん、クラウドファンディングをはじめとした他の方法でも資金を集めていきますが、バースデードネーションには、他にない可能性があると感じます。

 

団体に対する寄付を集められる

上記にも書きましたが、プロジェクト単位ではなく、団体に対する寄付を集められる点は大変魅力的です。日本では「現地にできるだけお金を届けたい。団体スタッフの給料として寄付金が使われるのは嫌」という人がまだまだ多いです。そのため、どうしても目的を明確にした寄付のほうが集まりやすい傾向があります。NPOに良い人材が集まってくるようにするためには、スタッフの待遇改善も大事なんですけどね。

こっちの記事に詳しく書いています。

www.ngomyanmar.com

人件費のことだけではなくて、団体に対する寄付はフレキシブルに使えるという利点があります。使途が決められていないため、そのときに必要だと団体が考えることに使えます。計画通りに行かず、緊急に資金が必要な事態も起こり得るので、自由度が高い資金は団体にとって本当にありがたいのです。

バースデードネーションは、団体に対する寄付を集められるという点で、使途が決まっているクラウドファンディングよりも自由度が高いお金となります。

 

団体関係者以外にも寄付集めを協力してもらえる

これは、本当に大きいメリットだと感じます。団体の中の人がリーチできる範囲はある程度決まってきています。でも、外の人が寄付集めをしてくださることで、団体のことを知ってくれる人がめちゃくちゃ増えます。

団体のことを全く知らない人でも「○○さんがオススメする団体なら間違いないだろう」と思って寄付してくれることがあります。そうすると、新しい方との関係ができますよね。

PLASさんは、バースデードネーションを外部の人にもやってもらえるようにHPを作られていました。まだ実施した人はいないみたいでしたが、力を入れようとしている様子がうかがえますね。

www.plas-aids.org

 

NPOがバースデードネーションを活用する際に直面する壁

上記ではバースデードネーションについての説明と、メリットを書いてきたのですが、正直「バースデードネーションはどう扱ってよいのかわからない」と感じることもあります。今のところ、バースデードネーションが日本に根付いていないのも、以下に書くようなことに原因があるのかなぁ・・・と。

 

バースデードネーションに対する違和感

「私の誕生日プレゼントとして、寄付してちょうだい!」と言うのって、誕生日プレゼントをおねだりしているみたいですよね。親しい人に対してならオネダリも良いと思いおますが、バースデードネーションはSNSなどで多くの知人に呼びかけるものです。あまりよく知らない人から「変なことをやっている」と思われるリスクもあるかなと感じます。

特に、団体内部の人からすると「私の団体に寄付して!」と言うのは、「私に誕生日プレゼントくれくれ~」と言っているのとほぼ同義ですので・・・。

団体外部の方だと、「へぇー、いいことやってるね!」感が出るので、あまり心配する必要はなさそうですが、内部の人がやるのはかなり違和感があります。

 

寄付疲れが起きやすい?

私の所属する地球市民の会では、1年ちょいの間に3回、スタッフのバースデードネーションを行いました。12月に1回、3月は私のバースデーに1回、また12月に1回です。最初の2回は目的を達成できたのですが、3回目はあまり集めることができませんでした。

集まらなかった原因は、「寄付疲れ」だと考えています。地球市民の会は小さな団体です。公式アカウントやスタッフの個人アカウントでバースデードネーションのお知らせをしましたが、それだとSNSでリーチできる人数は少ないのです。

実際、1回目のバースデードネーションは私の誕生日ではありませんでしたが、私がシェアしたことで私の友人・知人がたくさん寄付をしてくれました。その3か月後に2回目のバースデードネーションは、私の誕生日だったにもかかわらず、私の友人・知人からの寄付は少なかったです。おそらく「3か月前に寄付したのに、また??」と思われてしまったのかな・・・と思います。

バースデードネーションだけでなく、クラウドファンディングでも「寄付疲れ」は起きると思います。バースデードネーションは自分の信頼を使って、団体への寄付を促す仕組みです。何度もやりすぎて、自分の信頼を落としてしまうようでは、持続性がありません。

 

バースデードネーションでがっかりした経験

私の知人もバースデードネーションをやっていたことがありました。地球市民の会への寄付ではなく、別の団体への寄付です。知人にお祝いの気持ちを表したいと思ったし、他の団体がどのようにバースデードネーションを活用しているのか知りたいという気持ちもあって、わずかながら私も寄付をしました。

その後、どうなったかというと・・・自動返信のお礼メールと、その団体のメルマガに登録されたのみでした。知人からも団体からも特に何もなくて、なんだかガッカリ・・・。

せっかく新しい支援者との出会いなので、丁寧にフォローをすればファンが増える可能性もあったのに、非常にもったいないです。また、誕生日の人の信用を利用して寄付を集めているので、団体の対応が悪いと誕生日の人の信頼度まで下がってしまう可能性も。寄付いただいた後のフォローの大切さは、自分が寄付してみて身に染みてわかりました。

 

バースデードネーション攻略法! 

上記のバースデードネーションの壁(欠点)を改善するために、以下の2点をあげます。

 

バースデードネーションを外部の人にお願いする

団体内部の人がバースデードネーションをするのは、1回だけ。その後は外部の人にお願いするのが良いと考えています。

とはいえ、いきなり外部の人を募集しても、誰もやってくれませんよね・・・。バースデードネーションとか言ってもよくわからないし。なので、まずスタッフ→理事→ボランティアさん、VIP寄付者さん、スタディーツアー参加者という順に範囲を広げていけたらいいかなと思っています。

その際、内部の人が考えるべきなのは、バースデードネーションをやってくれた人が満足する結果を出すこと!目標金額は絶対に達成させ、「やって良かった」と思ってもらう工夫が必要になります。

 

団体がしっかりオーガナイズして、フォローする

寄付してくれた人に対して、しっかりと感謝を伝えることは当たり前にやるべきです。また、寄付金の使途も報告しなければなりません。当会では、バースデードネーションの寄付者さんに対して数回、報告メールを送っています。決して、メルマガに登録して終わりにしてはダメ!

しっかり報告をするためには、やっぱりプロジェクトを何か考えて資金集めをするのがやりやすいです。「団体への寄付になるからありがたい」と上に書きましたが、結局支援者さんの満足を得やすいのはプロジェクトに対する寄付になりますね。

 

誕生日の方に満足してもらうために、NPOスタッフがやるべきこと

バースデードネーションに協力してくれる外部の方に満足してもらい、周りの人に「次は私がバースデードネーションをやりたい!」と思ってもらいたいです。年間6回くらい、バースデードネーションが途切れずに実施できる状態に持っていきたいですね。

 

そのためには、

  • 寄付したくなるようなプロジェクトの企画立案
  • バースデードネーション用の魅力的な文章作成(誕生日の人の株も上がるような)
  • 団体公式SNS、スタッフの個人SNS、理事のSNS等を利用しての広報協力
  • 寄付者に対してお礼を徹底
  • 寄付者に対してプロジェクト実施後の報告

などを、団体スタッフと誕生日の人が協力して行っていく必要があるでしょう。

 

事例紹介

抽象的な話が多かったので、ちょっとイメージしづらかったかもしれません。当会で今までやってきたバースデードネーションの一部を具体例としてご紹介します。

 

スタッフ主催バージョン

NPO内部の人が主催で、「プレゼントくれくれ~」みたいな違和感が出るタイプのバースデードネーションです。スタッフ主催でやるなら、一人につき1回までが良いと思います。

※募集期間は終了しています。

syncable.biz

 

理事バージョン

理事は団体の中の人ですが、スタッフとは少し違った立場から語れるかなぁと思っています。また、理事は10名くらいいるので、交代でやってもらえば多くの人にアプローチできそうです。

こちらは、スタッフから理事長に「バースデードネーションやってください」と依頼し、スタッフで企画をつくりました。文章はたたき台だけ本人に書いてもらって、文章の肉付けはスタッフでやっています。サイトアップもスタッフ。ご本人には、SNSでの拡散を頑張っていただいております。

こちら、文章もかなり工夫をして、「クレクレ感」が一切出ないように書いています。どんな感じか、ぜひ読んでみてください。

現在募集中!(2019年12月6日まで)

syncable.biz

 

外部の方バージョン(バレンタインドネーション)

団体に関わりのあった学生さんが自ら企画して実施してくれました。このために新たにプロジェクトを企画したわけではなく、もともとある奨学金事業への寄付として資金を集めています。文章も学生さんが準備しています。

バースデードネーションではなく、バレンタインドネーションです。「チョコのかわりに寄付をください!」というウケ狙いな感じで、大変好評でした。普段なかなか寄付する余裕のない学生さんでも「500円の義理チョコをあげたつもりで(本命チョコではない・笑)」寄付してくれたようです。学生さんがチャレンジしてくれると、大人も応援したい気持ちになるから良いですよね。

※現在募集は終了しています。

syncable.biz

 

バースデードネーションにチャレンジしてくれる方募集中!

お誕生日に寄付をつのり、地球市民の会に託してくださる方を随時募集しております。バースデードネーションは、自分の周りの人が共感して応援してくれるので、とっても嬉しく幸せな気持ちになれます。良いバースデードネーションになるように、企画、文章作成、寄付者へのフォローなど、最初から最後まで伴走させていただきます。ミャンマー以外にも、タイ事業や国際交流事業、佐賀の地域づくり事業、SDGs普及等、いろいろできます。

ご希望の方は、地球市民の会まで。だいたいお誕生日の2か月前くらいから準備を進める必要がありますので、お早めにお知らせください。

 

地球市民の会メールアドレス

office@terrapeople.or.jp

(件名に「バースデードネーションのチャレンジ立候補」とご記載ください)