NGOミャンマー駐在員のハリキリノート

ミャンマーのタウンジーという町で、国際協力をやっています。NGO活動、ミャンマーあれこれ、国際結婚育児ネタなど

ミャンマーの新型コロナ経済支援(政府・民間)

ミンガラーバー。

ミャンマーで国際協力の仕事をしています、鈴木亜香里です。

 

ここ最近はミャンマーの新型コロナウィルス関係の記事を書くことが多いのですが、今日もその関連です。

 

新型コロナウィルスの影響で、ミャンマーの人々にどのような影響が出ているのでしょうか。それに対して、政府や民間がどのような支援をしているのかについて、私のわかる範囲でまとめたいと思います。

新型コロナウィルスの経済的影響

農村よりも町のほうが大変そう

村まであまり行けていないのですが、スタッフの話を聞いている限り、田舎の農家に住んでいる人にとっては「今すぐ食べ物がなくなる」ほどの影響は出ていないそうです。というのも、もともと彼らは自給自足に近い生活をしており、販売用の作物のほかにも、自家消費用の作物を庭にたくさん植えています。それを食べることができるので、なんとかしのげている様子です。ミャンマーの人口の7割以上は農家ですから、その人たちはとりあえずは大丈夫と言ってよさそう。

 

その一方で、町に住む貧困層の人たちが心配です。ヤンゴンのスラムみたいな場所に住んでいる人や、工場に住んでいる人たちには影響が出ていると思われます。私の住んでいるシャン州はあまり工場などがなく、スラム街もないのでよくわかりませんが、ヤンゴンはちょっと心配・・・。

 

物流がストップ

今、ミャンマーでは行動制限がかかっていて、むやみに移動をすることができません。長距離バスが止まっていたり、国内線の飛行機もめちゃくちゃ本数が減っています。物流に関しては減らさないようにと政府から指示が出ていますが、実際のところ、かなり物流が減っています。

 

となると、農家が作った野菜や卵などを大都市に輸送することができません。そのため、作った野菜を途中で放置している農家もあります。卵も輸送できないので、シャン州では値段が相当下がっています。

ナスが売れないので放置されて黄色くなっている畑

ナスが売れないので放置されて黄色くなっている畑

この調子では、農家は現金収入を得ることができません。自分の畑を持っている農家ならまだマシですが、地主にお金を払って畑を借りている人は、現金収入がなくて畑の借料を払えないので大変になってくるでしょう。そうなると、子供を学校にやることができなくなる家庭が出てくるのではないかな・・・と心配です。

 

農家が野菜を出荷できなくて困っている一方で、大都市には野菜や卵が届かなくなるので、値段が上がっているのではないかと思います。消費者にとっても、値段が上がって生活が厳しくなりそうです。

 

観光業は壊滅的

ミャンマーは現在鎖国状態ですので、外国からの観光客は一切来ません。ローカル客も移動を控えている状態ですし、各地の地方政府より「ホテルは閉鎖せよ」とのお触れも出ています。レストランもイートインは禁止で、持ち帰りかデリバリーしかできない状態です。

 

インレーやバガンなど、観光業が主な地域はかなりの打撃だと思います。我が家も航空券のエージェント業をやっていますので、ほとんど売り上げがない状態だと思います(夫のことなのでよくわからんけど)。

 

政府の支援

政府からの支援もあります。が、途上国ですので、「全員に一律10万円支給」みたいなことはできませんし、民もそれを理解して、だれも求めません。政府にお金ないのは皆が知っているので。融資があるだけでもマシという感じです。

 

融資

コロナで厳しくなった事業者向けに、低利子での融資があるようです。あまり詳しくないのでわかりませんが・・・観光系ならホテル観光省がやっていたり、農業系なら農業灌漑省などがやっているスキームがあると思われます。

 

ほかにも、マイクロクレジットの返済請求をこの期間はしないようにという指導も政府から出ていました。お金を返すのも大変だし、マイクロクレジットのスタッフは多くの人と接するので、コロナが流行るといけないので。

 

電気代

ステイホーム政策をとっているため、家にいる時間が増えて、電気代が増えます。なので、政府が4月の電気代を150ユニットまで無料にしてくれました。それ以上使用したら、その分のみ請求されます。5月も継続するとの話。

 

2020年4月6日発表

国民、宗教組織、社会組織(大使館と国連除く)のために、4月は家庭用の電気料金150ユニットまで無料とする。    

 

貧しい人への食糧支給

4月の水祭り長期休暇の際、ステイホーム政策がとられ、ほとんどのお店も閉められました。その間に貧困層が飢えてしまわないように、食糧支給が行われました。

 

2020年4月6日発表

水祭り休暇中に決まった収入のない人々のために、1世帯につき米8ピー、油50チャッター、塩50チャッター、豆1ビス、玉ねぎ(にんにく?)1ビスを10日から無料配布する。不要な配布、遅配、不正を防ぐため、政府とUMFCCI、福祉団体、ボランティア団体が協力して梱包、輸送、配布を行う。

 

ミャンマー語で、玉ねぎは「赤チェットン」でニンニクが「白チェットン」です。文章では「チェットン」とだけ書いてあって色の指定がなかったのですが、おそらく赤チェットン(玉ねぎ)と予想。にんにく1ビスは、いくらミャンマー人でもさすがに多いと思う。

1ビス=約1.6kg。50チャッター=約0.8kg

 

民間の支援

民間の支援が充実しています。ボランティア団体などが積極的に活動している様子は、さすが寄付大国!寄付ランキング世界1位をとったこともある国ですからね。さすがです。

 

貧しい人への炊き出し

政府から水祭り期間の食糧配布はありましたが、それだけでは足りないだろうと、多くの人たちが炊き出しや食料配布を行ったようです。Facebookでけっこう目にしました。

 

中には「水祭り中に食べ物に困る人がいたら、俺に電話をしてくれ!タウンジー町の〇〇(名前)。電話番号は09-・・・・」と書いた投稿をFacebookにする人も見かけました!電話番号まで公開して、困った人を助けようとする姿勢が本当にすごい。

 

コロナ指定病院や隔離施設へのお金、物資、労力の寄付

ミャンマーでは、各地にコロナ指定病院があります。その病院に、必要物資やお金を寄付するボランティア団体や個人が本当にたくさんあります。保健スポーツ省のFacebookでも、寄付を受け取っている様子が頻繁に流れてきます。

 

病院以外にも、疑い例や接触歴がある人が21日間隔離される施設があります。その施設は僧院だったり、学校だったり。そこの運営は保健スポーツ省の人がしますが、スタッフの数が足りないので、運営ボランティアに入っている人もいるようです。隔離中の人が快適に、安全に過ごせるような物資の寄付も行われています。

 

隔離施設でのボランティアの働きについては、こちらの記事に詳しく書いてあります。隔離されていた人の手記を翻訳したものです。

www.ngomyanmar.com

 

消毒関係

感染者が出た場所でも、出てない場所でも、消毒薬がバンバンまかれています。政府や地域の行政が主導することもありますが、ボランティアがお金も労力も出して撒いている場合もあります。

 

また、孤児院や病院などにマスクを寄付したり、ハンドジェルを寄付したり、市場などの人が集まりやすい場所に手洗い場を設置するなどの寄付もかなり行われています。レストランやお店などでは、外に手洗い場を設置するところが増えています。Facebook上で「孤児院にマスクを寄付したいけど、どこで入手できるの?」などといった情報がよく流れてきます。

 

Facebook警察

Facebook警察については、良いのか悪いのか・・・判断に迷いますが、一応ご紹介します。

 

陽性の人が出ると、その人の個人情報がめちゃくちゃ出回ります。日本では考えられないくらいに行動歴が探られ、シェアされまくります。プライバシーという観点では「うーん」という感じですが、コロナを広げないという点では機能しているようです。行政と市民の両方が、ものすごい勢いでリサーチしています。また、行動に疑いをもたれた人はわざと個人情報や経緯を公表して、理解を求めることもあります。

 

良くない行動をとっていた人は、ネット上で徹底的に叩かれまくってかわいそうなのですが、よい行動をとっていた人には「素晴らしい」「敬意を表する」などのコメントがたくさんつきます。基本的に優しい人たちが多いので、例えば年配の感染者が出た場合は「年配だから心配です。早く元気になって・・・」などというコメントがたくさんつきます。

 

「KFCがイートインしてた!」などと炎上することもあります。昨日KFCに行ったら、イートインが廃止されていました。

 

まとめ

コロナに一致団結して立ち向かうミャンマー

日本と比べると、政府も民間も団結してコロナに立ち向かっている雰囲気があります。指導者がアウンサンスーチーさんというのも、ミャンマーにとっては良かった点です。アウンサンスーチーさんが関係各所とネット会議をしている様子が、Facebookで生中継され、国民も熱心にそれをチェックしています。日本のプロンプター棒読み首相とは雲泥の差ですね。マスク2枚みたいな失望政策もないし。

 

スーチーさんのコメントについてはこちらの記事も参照。

www.ngomyanmar.com

 

スーチーさんや保健スポーツ省はなかなか頑張っていますが、ミャンマー国民は政府に期待しすぎません。今まで軍政だった時代も長かったし、政府の予算が足りずに民間がやることも多かったので、「政府ができないところは、自分たちでなんとかするしかない」という意識が強いのです。また、仏教の影響からか、寄付するのもボランティアするのも大好き!なので、民間がたくさん行動したり寄付したりして頑張っています。こういうところが、ミャンマーはいいなぁと思います。

 

最近は感染者ゼロの日も増えてきて、希望が見えてきています。頑張れミャンマー!

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農家の子供が教育を受けられるように

ちょっと宣伝となりますが・・・上述したように、コロナの影響で、教育をあきらめざるを得ない子供たちが増えることが予想されます。そういう子供たちが教育を受けられるように、地球市民の会は奨学金事業をやっています。コロナの影響で、例年以上に奨学金の必要性が高まっています。もし関心がある方がいらっしゃいましたら、こちらを見ていただけると嬉しいです。

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奨学金 認定NPO法人 地球市民の会