NGOミャンマー駐在員のハリキリノート

ミャンマーのタウンジーという町で、国際協力をやっています。NGO活動、ミャンマーあれこれ、国際結婚育児ネタなど

「寄付は自分が裕福になってからする」という人に見てほしいミャンマーの寄付事情

ミンガラーバー(ミャンマー語でこんにちは)

ミャンマーでNGO駐在員をやっている鈴木亜香里です。

 

ミャンマーは寄付大国ということをご存知でしょうか?

「世界寄付指数」という、CAFが発表しているランキングがあります。

2018年版では9位まで順位を落としてしまいましたが、2014年~2017年の4年間は1位だったのです。(2014年はアメリカと同率で1位、2015年、16年、17年は単独1位!)

 

寄付大国ミャンマーでは、寄付を集めるファンドレイジングもいろいろと面白いものがあります。ミャンマーで生活して9年目の私が目にした「ミャンマー版ファンドレイジング」についてお伝えします。

 

 

誕生日はプレゼントをもらう日ではない!

バースデードネーションという言葉を聞いたことがありますか?お誕生日の人が「私にプレゼントをくれる代わりに、この活動に寄付してください」と呼びかけ、友人など賛同する人たちからの寄付を集める手法です。(別バージョンとして、「僕へのチョコレートはいらないから、寄付をくれ!」と言うバレンタインドネーションなどもあり。最初から本命チョコをもらえなさそうな男子が言うとウケて、義理チョコならぬ義理寄付が集まりやすい)

 

私の所属する地球市民の会でも何度か実施しました。

syncable.biz

 

無事に目標金額が集まり、お誕生日寄付をいただいたのはとても嬉しかったです。その一方、なんか欧米っぽい考え方で、日本人にはイマイチなじまないような気もしています。

 

ところが、ミャンマーで「誕生日寄付」というと、全く別のことを指します。バースデードネーションとは全く逆で、「今日は私の誕生日だから、ごちそうさせて!」という感じ。

誕生日は、プレゼントをもらう日ではなくて、自分がまわりの皆にプレゼントをする日なのです。

 

大人でも誕生日パーティーを開くことはよくあります。で、友人などを呼んで、たくさん食事を振る舞います。

また、僧院や孤児院等に食事を寄付することもよくあります。人数は場所によって様々ですが、100人以上いる僧院の豪華な1食分といったら、けっこうな金額になるはず・・・。

でも、この寄付が喜びなんです。寄付したいんです。誕生日だけでなく、結婚式やお葬式のときも、周りの人や僧院などに食事を振る舞います。

 

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私の長男の誕生日会(出産お披露目会)。お義母さんの友人をたくさん招待してごちそうしました。13万円くらいかかった・・・。でも、ミャンマーではこれが喜びなんです。

 

街頭募金に対する気合いの入り方が違う

日本でも街頭募金はよく行われていますね。募金箱とのぼりなどを持って、駅に立って募金を集めるあれですね。

ミャンマーでは、気合いの入り方が全く違います。なんと、メイン通りに仮設テントを設置してしまう!そして当番の人が丸一日テントに座り、寄付を受け付けています。お金だけでなく、米袋やジュース等の物を持ってくる人もたくさんいます。

 

さすがにミャンマーでも日常的にテントを設置するわけではないですが、2015年にチン州で洪水被害が出たときなんかは、メイン通りがずーっとテントだらけになりました。500メートルくらい、ほとんど間隔空かずにテントです。

それほどテントの数が増えると、注目を集めるために歌を歌いだす団体も。普段は不良そうな若者たちも、一生懸命に歌って寄付を集めており、胸をうたれます。

 

 

宝くじ式ファンドレイジング

ミャンマー人は宝くじが大好き!うちのスタッフたちも一獲千金を夢見て、毎週のように宝くじを買っています。そんなミャンマー人がワクワクしてしまうのが、「宝くじ式ファンドレイジング」です。

 

僧院や孤児院が主催して、クジを発行します。当たると、バイクやスマホなどがもらえます。賞品はスマホやバイクなど、ミャンマー人がほしがるものがたくさん!外れても寄付になるのでまあいいかーと思えます。普段は宝くじを買わない派の私も、これは買ってしまいます。

 

 

買い物のついでにもう一品

最後に、スーパーマーケットで気軽にできる寄付をご紹介します。ミャンマーで一番大手のスーパーであるシティーマート系列で見かけました。

 

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「余分に買いましょう!」と呼びかけるポスター

6月はミャンマーの新学期シーズンで、文房具や制服などが必要となります。スーパーに買い物に来る子連れ家族がたくさん!そういう家族に向けて「もう一つ余分に買って、孤児院に寄付しましょう」と呼びかけています。

「スーパーで買ってもらう量を増やしたいだけやん!」と私なんかは思ってしまいますが、ミャンマーの人たちは素直なようで、たくさんの寄付が集まっていました。寄付する孤児院はどこか不明でしたが、スーパーが責任を持って届けてくれるという信頼はあるみたいです。

 

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集まった文房具。自分で選んでレジで購入してから、この箱に入れる

お金ではなく、商品を自分で選んで買ってもらう方式なので、寄付する側は「自分が選んだ」という感覚があって、満足度も高いのかも!?

日本だと、レジの前に募金箱が置いてありますが、そういえばミャンマーではレジ前募金箱をあまり見かけたことがありません。気軽すぎてダメなのかしら・・・?

 

 

寄付の使い道はおまかせ

欧米や日本のNGO業界などでは、「アカウンタビリティーが必要」「寄付の使い道をしっかり寄付者に報告するのが大事」などとよく言われていますが、ミャンマーにおいては、そこまで報告が大切とは感じられていません。

皆、寄付をすることが喜びで、寄付をした時点で徳を積むことができています。なので、その後そのお金が何に使われたかという点には、あまり興味がないみたい。

寄付を集める側も、僧侶や有志の団体などが中心で、自分が信頼できると思ったところに寄付をしているのでしょう。寄付が悪用されるかもという心配は全くないようです。

 

さらに、「ありがとう」と言われることもそれほど望んでないみたいです。一番人気の寄付先は僧院ですが、僧侶は寄付を受け取る役割であって、感謝の言葉は口にしてはいけないことになっています。寄付された食事を、何もリアクション見せずたんたんと食べる僧侶たち。それを見て、心が満たされる寄付者。寄付受領証をもらえるので、それをコレクションする人はいるみたいですけどね。

 

欧米や日本などではアカウンタビリティーはとても大切でしょうが、そういうのが必要ないくらいに寄付が根付いているミャンマー。素晴らしいことです。

「裕福になってからしか寄付できない」と考えている人には、後発発展途上国のミャンマーが1位になっていることを知ってもらいたいですね!

 

 

リンク集

世界寄付指数はこちらから見れます。ちなみに、日本は128位(2018年)。

www.cafonline.org

 

ミャンマーには寄付文化が根付いていて、本当に日常的に寄付が行われています。

ミャンマー人の寄付行動や考え方を知りたい方はこちらから。わかりやすかったです。

inclusiveworld.net

 

「自分も寄付をしてみたい」と思ったら、すぐ行動!どこに寄付してもよいと思いますが、地球市民の会も検討していただけると嬉しいです。アカウンタビリティーしっかりやりますよ。

terrapeople.or.jp