NGOミャンマー駐在員のハリキリノート

ミャンマーのタウンジーという町で、国際協力をやっています。NGO活動、ミャンマーあれこれ、国際結婚育児ネタなど

「援助慣れ」は誰がつくる?インレー湖の事例

ミンガラーバー

インレー湖の環境保全事業をやっている、鈴木亜香里です。

 

今日は「援助慣れ」というテーマについて、書いてみたいと思います。援助業界でよく聞かれる単語です。私自身も「インレー湖の人は援助慣れしていて、やりづらい」などと(ちょっとドヤ顔で)言ったりします。

 

「援助慣れ」は、援助する側の人たちが、援助を受ける側の人たちを、ネガティブに描写する言葉です。そこの人たちを「悪者」のように言ってしまう言葉なのですが、実際、その「援助慣れ」を引き起こしたのは誰ですか??という話です。

 

インレー湖の環境保全事業を進める中で、地域の人たちと話す機会が最近多いです。そこで聞いた事例を紹介しながら、「援助慣れ」について考えてみたいと思います。

 

インレー湖でのプロジェクトは難しい!?

私の所属するNGO「地球市民の会」が活動するミャンマーのシャン州には、「インレー湖」があります。風光明媚な観光地で、湖上にはインダー族という民族が住んでいます。モーターボートに乗って、景色やインダー族の文化を楽しめる場所です。そのインレー湖は、近年の人口増加や生活環境の変化によって、危機にさらされています。TPAも、インレー湖の環境改善事業に長年取り組んできました。

 

インレー湖の環境については、このブログ内で 5回の連載でまとめています。こちらもあわせてご覧ください。

www.ngomyanmar.com

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以前の記事でも書きましたが、インレー湖でプロジェクトを実施するのは、他地域と比べて難易度が高いと感じます。

 

インレー湖は有名な観光地であり、興味を持つ人も多いので、たくさんのアクターたちがいます。UNDP、JICA、国際NGO、海外の研究者、そして観光業者(主に外資系の高級ホテル)。

 

地元の人たちは、何かお金が必要なことがあれば、すぐにドナーを探します。NGOに寄付をお願いしてみたり、ホテルに資金を出すようにお願いして見たり。

その様子が、自分たちで頑張る気持ちがないように見えてしまいます。

 

こちらの記事にも一部書いています。

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何か研修やセミナーをやるときも、日当を出したり、交通費やランチがつかないと参加者は少なくなってしまいます。日当目当てじゃなくて、研修の中身に価値を感じて参加してもらいたいのに・・・。

 

援助慣れの作り方

先日、ローカル団体や政府の方たちと話し合いを進めていく中で、こんな話を聞きました。

 

インレー湖では、ホテイアオイが大繁殖しています。ホテイアオイは、通船障害の原因になり、湖の生態系を変えてしまうので、引き揚げて除去する必要があります。

 

以前は、政府と地域住民が力を合わせてホテイアオイの除去を行っていました。政府の予算から、ホテイアオイ除去作業に使用するボートのガソリン代を出し、住民はボランティアで働いていたのです。

 

ところが、あるとき海外の団体がやってきて、ホテイアオイ除去の支援プロジェクトを開始しました。作業用ボートのガソリン代だけでなく、ボランティアで働いていた住民に「お手当」を支払ったそうです。海外の団体は予算が潤沢にありますから、お手当のばらまき状態です。

 

そうして数年たち、プロジェクトが終了し、その団体は去って行きました。

ホテイアオイは相変わらず繁殖しています。

ボート代だけで除去作業をやる住民はいなくなりました。

政府の予算は限られていますので、お手当を出したくても出せません。

 

インレー湖の環境は、どんどん悪くなる一方です。

湖上にホテイアオイが繁殖している様子をボート上から撮った写真

繁殖するホテイアオイ

 

お金はどこに消えた?

これまで、インレー湖の環境のためにたくさんのプロジェクトが実施されてきました。

ノルウェー政府がUNDPにお金を出して実施したインレー湖プロジェクトもあるし、我らが日本のJICAだって、インレー湖の土砂流入のためのプロジェクトを現在実施中です。その他にも、大小さまざまな国際NGOが入ったり、大学の研究者が入ったりして、本当にたくさんのお金がインレー湖のために使われてきました。

 

でも、インレー湖の地元の人たちはこう思っています。

「あれだけたくさんのお金は、いったいどこに行ったんだ・・・?」と。

 

プロジェクトのお金の大部分は、先進国の人間の人件費や交通費、調査費などの、目に見えない形で使われてしまっています。地元の人から見ると「インレー湖のためと言って、私腹を肥やしている」と見えます。インレー湖を自分の金儲けのために利用しているように見えているようです。

 

その気持ちも、わからなくはありません。先進国のプロジェクトにかかわる人の人件費は、ローカルの人の何倍も高い。何かを建設する場合も、ローカルでやったら安いのに、わざわざ高い建設会社に依頼している。調査はたくさんやっても、その結果が地元の人にシェアされていない。

 

(国連職員用のビリヤード台やテニスコートを作ったりもするしね)

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地元の人たちは、「インレー湖の環境のための予算」と言いながら、インレー湖のために有効に使われていないと感じているようです。そのように感じているなら、先進国の人間に対して「もっとお金を出せ、もっと支援してくれ」と言うのは正当な主張だと感じます。

 

まとめ :活動を続け続けるのが大事

地元の人たちを「援助慣れ」の状態にしてしまったのは、先進国の支援団体の人たちです。今回耳にしたのは海外の団体の話でしたが、自分たちの活動に驕りはないか、長期的に良い方向に進めるにはどうしたらいいのか、振り返る良いきっかけとなりました。

 

3年や5年で帰ってしまうプロジェクト型の支援ではダメ。やはり地域に根付いて、息の長い活動を根気よく続けていく必要性を感じます。続け続けないとです(頭痛が痛いみたいな表現だけれども)。

 

地球市民の会の活動

地球市民の会は、地域の人たちと共に学びながら、インレー湖の環境保全活動を続けていきたいと思います。そのために必要なのは、活動資金です。

 

地球市民の会はこれまで、緑の募金、地球環境基金、三井物産環境基金、国際協力財団、地球環境日本基金、外務省NGO連携無償資金など、たくさんの助成金をとってインレー湖の事業を実施してきました。

植林したり、環境教育を行ったり、水質調査を行ったり、村落社会調査をおこなったり、給水事業を行ったり・・・規模は小さいながらも、いろいろな事業を実施してきました。

模造紙に付箋を貼りつけて話し合うワークショップ参加者

ワークショップの様子

助成金ももちろんありがたいのですが、個人の方からのご寄付も受け付けています。助成金に比べたら、個人からの金額は少ないかもしれませんが、応援していただいている気持ちがパワーになります。本当にありがたい。

インレー湖に来た事がある方、これから行くつもりの方は、ぜひご検討ください。インレー湖を一緒に守りませんか。ぜひ、応援よろしくお願いします。 

www.terrapeople.or.jp