ミンガラーバー(ミャンマー語でこんにちは)
ミャンマーでNGO活動に励む鈴木亜香里です。
先日、ローカルスタッフと一緒に団体のビジョンとミッションを作りました。日本の本部ではビジョン・ミッションなどを制定している団体も多いでしょうが、それをローカルと共有できている団体は少ないのでは?また、ローカルスタッフだけでビジョン・ミッションを作っている団体もほとんどないかと思います。日々の忙しさに追われ、なかなか手を付けづらいことではありますが、やってみたらとても気づきが多くて良かったです。
今日は、当会ローカルスタッフが作ったビジョン・ミッションの紹介と、それに付随して考えたこと等を共有します。
あとはローカルスタッフに任せた!
地球市民の会(TPA)は日本のNGOですが、3年後を目安に、日本人ではなくローカル中心に運営していくことになっています。活動を開始した2003年当時に比べて、シャン州はぐんぐん発展してきました。ローカルスタッフに仕事を任せられる部分も増えてきています。
また、同じ地域でずっと活動を続けていると「まだ必要なんですか?」と言ってくるドナーもいます。いや、あれだけ発展している日本でもまだまだ問題がいっぱいあるんだから、10年ちょっと活動したくらいで問題がなくなると考えているのは「???」。
ですが、助成金をもらえないことには活動できない弱小NGO。TPA本体は、シャン州よりも、もっと発展が遅れていて、他団体もまだ入ることさえできていない「チン州」に軸足を移していくことになりました。今まで活動していたシャン州はローカルに任せて撤退です。
シャン州の事業を受け継ぐローカル団体として、TPAローカルスタッフ中心で「TPA Myanmar(TPAM)」という組織を作りました。ローカルNGOとして、登録も済ませています。私は顧問としてTPAMに関わっていきます。
今まではどちらかというと、日本人スタッフが中心に事業を組み立ててきましたが、これからはローカルスタッフが考えて、彼らが必要だと思う事業をやっていくことになります。資金確保や団体運営も、ローカル化。「自団体が必要なくなるのが、NPOの究極のゴール」と言われることがありますが、まさにそれを実現できるように頑張っているところなのです。
ビジョンとミッションを作る
組織を運営していく上で必要なのが、ビジョンとミッション。TPAミャンマーには、まだ明文化されたものがありませんでした。そこで、スタッフたちと一緒にワークショップ形式で、TPAミャンマーのビジョンとミッションを作りました。KJ法という方法を使いましたが、思ったよりも時間はかからず、2時間半程度。
まずは付箋に「今までに誰かからTPAが褒められたこと」について書いてもらいました。一人3枚以上。その内容を1枚ずつ発表していきつつ、ああだこうだと具体的なエピソードを話す。似ている付箋はまとめて、それを言い表す言葉を考えるという作業をしていきました。
そうやって出来上がったのがこちら(ミャンマー語で作って、その後に日本語に訳しています)。
Vision and Mission of TPA Myanmar
ဒေသခံများ ကိုယ်တိုင်း ဦးဆောင်ပြီး တစ်ရွာချင်းစီမှ ဒေသတစ်ခုလုံး စဉ်ဆက်မပြတ် ပွံ့ပြိုးတိုးတက်ရန် ရည်ရွယ်ထားပါသည်။
၁) အပြန်အလှန် ဆက်နွယ် အကျိုးပြု စိုက်ပြိုးရေး စနစ်ဖြင့် ဒေသခံများ နေထိုင်မှု ဘဝ တိုးတက်အောင် ကူညီပါမည်။
၂) ကျေးလယ်ဒေသ ပွံ့ပြိုးရေးအတွက် ခေါင်ဆောင်ကောင်းများ ပေါ်ထွန်းရန် ဆောင်ရွက်မည်။
၃) သဘာဝ ပတ်ဝန်းကျင် ချစ်မြတ်နိုးသူကို တိုးပွားလာစေပြီး သဘာဝ ပတ်ဝန်းကျင်ကို ထိန်းသိမ်းမည်။
၄) ကလေးများအားလုံး ပညာ သင်ကြားနိုင်ရေး အတွက် လိုအပ်သော အကူအညီများ ရရှိအောင် ဖန်တီးပေးပါမည်။
၅) ယဉ်ကျေးမှု ဖလှယ်ခြင်းဖြင့် အပြန်အလှန် ချစ်ကြည်သော ကမ္ဘာ့လူသားမိသားစု ဖြစ်အောင် ဆောင်ရွက်မည်။
ビジョン
地域住民自身がリーダーシップを発揮し、一村から地域全体への持続的発展を目指します。
ミッション
1)循環型農業を通じて、地域住民の生活向上を支援します。
2)地域発展のためのリーダーが出現するよう、行動します。
3)自然を愛する人を増やし、環境を守ります。
4)子供たちが全員教育を受けられるように、必要な支援を得られるよう対応します。
5)文化交流を通じて、相互に慈しむ「地球市民ファミリー」となるよう、行動します。
言葉の奥に込められた気持ち
皆で話し合いながら作った言葉なので、納得感があります。とてもしっくりきます。言葉を見るだけで、スタッフ皆でした議論の内容を思い出せるのが良いですね。
ビジョン
地域住民自身がリーダーシップを発揮し、一村から地域全体への持続的発展を目指します。
TPAがなんでもやるのではなく、地域のリーダーを育てていきます。
政府がやるような大きな事業をTPAMもやるということではなく、一村単位の小さい事業を積み上げることで、地域全体を発展させていこうという想いが入っています。
持続的発展というのは、人間だけではなく自然にも配慮することを示しています。
ミッション
1)循環型農業を通じて、地域住民の生活向上を支援します。
この中には、農業研修はもちろん、農業インフラ整備、農作物のマーケット構築、農業資材販売、農業貸付金など、農業に関係するいろいろな支援をすることが含まれています。
2)地域発展のためのリーダーが出現するよう、行動します。
良いリーダーがいる地域は発展するといままでの経験で分かっています。良いリーダーをたくさん育てていき、各地のリーダーと一緒に事業をしていきたいという想いが込められています。
3)自然を愛する人を増やし、環境を守ります。
環境研修、ゴミ問題研修を実施して、環境問題について理解している人を増やします。また、植林等の具体的行動もとっていきます。
4)子供たちが全員教育を受けられるように、必要な支援を得られるよう対応します。
まだ基礎教育にアクセスできていない子どもがたくさんいるので、奨学金や学校建設・保育園建設・寮建設などを行い、みんなが基礎教育にアクセスできるようになることを目指します。
5)文化交流を通じて、相互に慈しむ「地球市民ファミリー」となるよう、行動します。
ここには、日本をはじめとした外国の人たちも含まれます。交流を通じてミャンマーのことを知ってもらい、TPAミャンマーの仲間になってもらいたいという気持ちが込められています。
地球市民ファミリー
個人的に気に行っているのは、「地球市民ファミリー」という言葉です。少し前にスタッフから「地球市民の会は家族みたいだ」と言われました。スタッフ同士がとても仲が良くて信頼感があります。休みの日まで一緒に遊んだりしているくらい(笑)。TPAの研修修了生で、他のNGOで働いている人も「本当はTPAで働きたい」と言ってくれるほど(給料はぜったい他団体のほうが良いのに!)。
「なんで家族みたいに感じるのか?」という話になったとき、「組織がとてもフラットだから」という答えが出てきました。ミャンマーの一般的な組織では、上の人がえらくて、上の人の命令は絶対です。下の人の考えを聞いたり、下の人の都合を考慮するということは全くないそうです。でも、TPAでは、例えばお客さんが農業センターを訪問したいというときに「○日にお客さんが来たがっているけど問題ない?」とセンター長に確認しています。スタッフいわく、それが嬉しいとのこと。
ミーティングのときなども、上下関係は特になく、皆が意見を言いやすい雰囲気になっていると感じます。
ワークショップはすごい!
今回、ワークショップをやってみて、本当に良かったと感じています。楽しいし、思ったよりも時間がかからなかったし、何よりも皆の想いを確認できたのが良かった!ローカルスタッフにあまり話していなかったTPA本体の設立の経緯や、ミャンマー事業を始めた経緯、創設者の想いなども伝えることができました。こんなことなら、もっと早くやっておけば良かったという感じです。
前職で、コンサルティングの手法として、ワークショップ形式の研修をやることがありました。カリスマ講師やファシリテーターの先輩社員たちに教えてもらったことが、今の仕事で生きていると思います。ミャンマー語でファシリテーティングができる人材はほとんどいないでしょうから、スタッフたちにファシリテーティングスキルも伝えていきたいと思っています。
次回は、クレドやビジネスプランを作っていきたいと思っています。良いファシリテーティングができるように、勉強しないと!!
カリスマを目指す方へ
TPA創設者の古賀先生の伝記。佐賀ではとても有名な、ものすごいカリスマがあった方です。私がTPAに入ったときにはもうお亡くなりになっていたのですが、いまだに周りの人から古賀先生の武勇伝を聞きます。そんな古賀先生の生きざまをまとめたのがこの本。NPOやNGOを作りたい、起業したいという方に勧めたい一冊です。