ミンガラーバー。
認定NPO法人「地球市民の会」の鈴木亜香里です。
最近は、「寄付」や「贈与」について、いろいろ考えています。ファンドレイジングをやり始めて、「人はなぜ寄付をするのか/しないのか」みたいなことが気になるのです。
今回は、今じわじわと売れている話題の本
『世界は贈与でできている 資本主義の「すきま」を埋める倫理学』
本気でおすすめ!
この本は、twitterで知りました。知人が「とても良い」とおすすめしていて、気になる「贈与」というキーワードも入っていたので即買い!読んでみたら、もうめちゃくちゃ良い本でした。今年の良かった本暫定1位です。
特に第1章と第9章が圧巻!最初と最後ですね。作者の近内さんはこの本が1冊目だそうですが、文章が鬼気迫る感じで深いです。読み終わるのがもったいないと、何度思ったことか・・・。
対談した!
とにかく良い本なので、国際協力系ブロガーサロンでおすすめしたところ、ケニアの孤児院支援をしている亀谷さんも読んでくださり「対談しましょう!」ということになったのでした。
対談の様子はこちら。zoomで語ったものを、少しカットしただけでそのままYou Tubeに載せました。25分。
こんな素人の映像を見る人が何人いるのか・・・という気もしますが、話している本人たちはとても楽しかったです。国際協力に関わっている人にも、かなり共感してもらえる内容になっていると思います。
亀谷さんも、この対談についてブログを書かれています。
ミャンマーNPOの鈴木亜香里さんと『世界は贈与でできている』について対談 | ケニア・エイズ患者と孤児の自立支援 Tumaini Nyumbani(トゥマイニ・ニュンバーニ)希望を我が家に
対談内容より
以下、Youtubeの内容を簡単にまとめています。開始時間も記載しているので、気になるところだけ聞いてもらってもいいかと思います。
0:00 お互いの自己紹介
地球市民の会 鈴木亜香里
Tumaini Nyumbani 亀谷尚美
3:03 お椀の中にいるのか、丘の上にいるのか
亀「本で一番印象に残ったのは、お椀の中にいるのか、丘の上にいるのかということ。ケニアやミャンマーと関わっていると、丘の上(危なっかしい世界)にいるというのを実感しやすい」
鈴「日本も本当は丘の上にいるのに、気づけていない人が多い。気づいた人が行動を起こし始めているのだと思う」
5:28 「自分は不当に受け取った」と気づいた人が贈与をする
鈴木「たまたま日本に生まれたことが、どれだけ恵まれていたかに学生のときに気がついた。幸運にも自分は学ぶ機会がもらえたので、恵まれない場所に生まれた人のために国際協力をやりたいという気持ちが生まれた。この本の中に、使命感は生命力だと書いてあった。贈与を受け取ってくれる人がいるから、贈与した側は生命力を得られるという記述に感動した。」
8:33 贈与を交換に見せようとするNGO業界
亀「相手が贈与と気づかないように贈与をするという記述もあった。大した金額じゃないから気にしないでと言って、わざと自分の寄付を低く見せて寄付してくれる人がいる」
鈴「その一方で、NGO業界は寄付を交換に見せようとしている。クラファンでリターンを出したり、寄付が何に使われるかしっかり見せるのが大事とされている。それはたしかに大事なことだけど、贈与は気づかれてはいけないという原則からはそれてしまう」
亀「国際協力をやるときには、すべてのお金を予定通りに使って、確実に成果につなげるというのは難しい。日本でできても、アフリカでできないこともある。」
11:04 困っている人ほど寄付をする
鈴「自分が困っているときこそ寄付をする人もいる。家が火事になった支援者さんがいた。普通ならお金が大変なので継続支援をやめるが、寄付の口数を増やしたいという連絡が来た。自分が大変なときこそ、ミャンマーの子供のことを想うと力が湧いてくるので、と言って。それが、贈与することで生命力がもらえるということだと思う」
亀「困ってない方、健康な方より、病気の方や苦労をされている方こそ、寄付をしてくれる人が多い。」
鈴「最初のお椀と丘の話。困っている人は、いつも自分が丘の上の不安定なところにいることを実感しているからではないか」
亀「最初に受け取ることから贈与が始まるというのが、本当の贈与の流れ」
13:46 現地に行かないと気付くのは難しい!?
鈴「日本人はすでに受け取っている人が多いはず。どこまで気づけるかという問題」
亀「私もアフリカに行くまで気づいていなかった。こんな大変な生活なのに、私にご飯を作ってくれているのを見て、とても衝撃を受けた。私たちは本当に恵まれていると感じた。現場に行かないと、気づくのは難しい」
鈴「国際協力業界に入っている人は、スタディーツアーきっかけの人がとても多い。日本にいると情報は知っているはずだが、現地に行って肌感覚で知るというのが必要なのか。これからコロナでスタディーツアーができない時期が続く。現地に行けないことで、国際協力に興味を持つ人が減ると困る」
亀「zoomなどで現地の様子を見せられると良いかもしれない。肌感覚までは難しいかもしれないが」
鈴「ブログや動画配信でやっていくしかないのかな・・・」
17:23 国際協力をするのは、日本人のため
鈴木「地球市民の会の理念は、地球市民(誰かのしあわせが私のしあわせと感じられる人)を増やすこと。贈与をする人を増やすと言い換えてもよいと思う。この理念にとても共感している。私はミャンマー駐在員だけど、今はミャンマーの人よりも、日本の人に向かって仕事をしているほうが多い」
亀「ケニアのためというより、日本のためにと思って国際協力をしている。日本の人に話をするときは、ケニアのためと言っているが、本当は日本の人のため」
鈴木「寄付を1度やってみると、はまる人はめちゃくちゃはまる。何度も寄付するリピーターさんもいる。そういう人は幸せな生き方をされていると感じる」
亀「そのとおり。国際協力をやっている人は前のめりで、それしかないという感じになっている」
鈴木「まさに生きがい。贈与することで生命力をもらっている。1回足を踏み入れたらわかること。だから、最初の1歩の寄付を皆にやってもらいたい」
19:33 クラウドファンディングでは、贈与をして感動を得られる
鈴木「8月1日~31日に学校建設のクラウドファンディングに挑戦する」
亀「クラファンのページを見たが、生まれた地域によって学校に行けるひと、行けない人が出てくるのはもったいないことだと感じた」
鈴「昔は、なかなか寄付してくださいと言えなかったが、今は言える。この本を読んだおかげもあって、寄付したら楽しくなるから、あなたのためにやったほうが良いと言いたい気持ち。クラファンサイトにはミャンマーの子供のためと書いているけど、日本人のためにクラファンをするという気持ち。」
亀「それは本音。書けないけど本音」
鈴「団体のカリスマ創設者が「感動なくして何が人生ぞ」と言っていた。もともと当会は、佐賀の人が感動を味わうために、世界の人とつながるために国際協力を始めたという流れがある。感動するからやろうよ!と言いたい」
亀「寄付しないとわからない部分がある。寄付をすると自分も関わったことになる。立ち位置がずれる。関わったからこそ、先が気になるようになる」
鈴「私たちは、そこをつなぐ役割」
22:25 お知らせタイム
鈴木「クラウドファンディング実施中!贈与をやってみたいという方はぜひ。1万円寄付すると学校の看板に名前が入る。いつか見に行けたらいいなという気持ちでやってもらえたら。子供がいる方におすすめなのが、子供の名前を看板に入れること」
亀「今緊急で、FBでコロナの食糧支援を募っている。8月25日に岐阜県可児市でマルシェのイベントがある」
対談を終えて
「国際協力をするのは、日本人のため」とか、普通の人からするとブッ飛んでいるように感じられてしまうかもしれません。でも、共感できるというNGOの人たちや支援者さんもたくさんいると信じてます。
亀谷さんと私、実は知り合ってまだ数か月で、リアルで会ったこともありません。長く話したのも、対談の打ち合わせが1回(10分程度)と、対談本番に40分程度でした。ですが、国際協力やってる、子育てもやってる、外語大出身、同い年などの共通点もあり、楽しく対談できてよかったです。対談を提案してくださった亀谷さんに感謝です。
そして、われらの出会いの場となったオンラインサロン「国際協力系ブロガーサロン」主催の原さんにも感謝!月1,500円で、国際協力を頑張っている仲間と勉強しあえるサロンです。とても良い雰囲気のコミュニティーになってきているのでお勧め。
本を読むと、対談の内容をより深く理解できると思います。対談では話しませんでしたが、「寄付が偽善と感じられるのはなぜか」なども本には書いてありましたよ。本当におすすめ!kindleでも読めるので、海外にいる方も読めますよ~。