ミンガラーバー(ミャンマー語でこんにちは)。
ミャンマー在住の鈴木亜香里です。
今日は、ミャンマーのジェンダー事情について書きたいと思います。ミャンマーは男女平等な国なのか、はたまた全くそうでないのか。現地で生活する中で出会う、ジェンダーにまつわるエピソードを紹介します。
ミャンマーは男女平等の国なのか?
「男の子が欲しいに決まっている!」
私は今、怒っています。
というのも、スタッフ(男性)の奥さんが妊娠中で、先日子どもの性別が判明しました。彼は本当は男の子が欲しかったのですが、子どもは女の子でした。「女の子はめちゃ可愛いよ。いいじゃん!」などと周りは言っていたのですが、彼は「第一子で女の子を欲しがる人なんて、ほとんどいない。男の子ばかりが続いた人だけ、女の子を欲しがるんだ。皆、男の子が欲しいに決まっている!」と。
この発言に、私のフェミ心が刺激されました。「男を優遇する社会になっているから、皆男を欲しがるんだ!あなたの娘のためにも、女性が生きやすい社会を作らないとだめだろう!!」と。そして、2日にわたり、ミャンマーや日本のジェンダー問題について議論(半分言い合いの喧嘩)でした。
ジェンダーギャップ指数(2018)
さて、ミャンマーのジェンダーについてはどういうイメージをお持ちでしょうか?
・スーチーさん(女性)が政治の要職についている
・公務員の約半数が女性で、給与も男女差別がない
・学校に通っている割合も、男女ほぼ同じ。
などという情報があると、けっこう男女平等な国なのかな?という印象があります。大学時代に何かの統計では、男女平等ランキング1位だと見た覚えがあります(何だったか忘れたけど・・・。アジアで1位だったのかな?)。
ジェンダーギャップ指数(2018)という統計を見てみると、ミャンマーは88位でした。ちなみに、日本は110位です。統計を一概に信用はできませんが、日本よりはマシというレベルなんでしょうか。
普段の生活で遭遇するジェンダーギャップ
村の委員会は男ばっかり
仕事柄、村に行くことがよくあります。例えば、村に学校を建てる、水タンクを建てる、研修をする、などといろいろなことで村人に集まってもらうことがありますが、だいたい男ばっかりが来ます。学校建設委員会などの委員会を村に作ってもらう場合は、ほぼ100%男だけの委員会となります。
国際協力の仕事を進めていくうえで、ジェンダーへの配慮はとても大事なことです。でも、現状はなかなか難しい。委員会に女性を入れてもらうようにしたとしても、名前だけメンバーに入れる、会計補佐にする程度。女性が代表などの重要な役割を担うなんてことはほぼありません。都会ではあるのかもしれませんが、2019年現在のシャンの田舎では、ゼロです。
ちなみに、スタッフに「本当はNGOとして、村の委員会に女性を入れないとダメだ」と話したところ、「じゃあ、会計担当だ」「女性は政治の世界に興味がない」「女性がやりたがらない」などと言われ、また私ブチ切れ!
また、「子どもと女の言葉は聞く必要なし」という言い回しも、けっこう使われるそうです。まったく・・・。
テストの点数の差別
日本では、医学部受験の女子に対して、不当な減点があったと大問題になっています。この問題、私も怒り狂って、ミャンマーからウォッチングしております。
しかし、ミャンマーでは、女子への減点が当然のこととして行われております。10年生試験と言われる試験(日本のセンター試験のようなもの)の点数で、大学のどの学部に入れるかが決まるのですが、その合格ラインが男女で異なります。例えば、医学部なら男子○○点、女子○○点という感じ。女子のほうが20点ほど高い点数をとらないといけないルールになっています。日本はこっそりと不正をしていましたが、ミャンマーは最初からそういう制度になっていて、国民も皆知っています。
スタッフいわく「女子は地方に行きたがらないからだ」とのこと。公務員は地方転勤があります。ミャンマーの地方は、本当にインフラ(道、電気、水)がないような大変な環境なので、「佐賀市に転勤になる」くらいのイメージではないです。本土から遠く離れた離島に転勤になることが、ほぼ100%あるとイメージしてください。
日本だと、「医者は激務だから」となりますが、ミャンマーだと「公務員は地方だから」となるのがちょっと面白いですね。しかし、ミャンマー女子が一人で外出できないように育てられたのはなぜだ!?周りの環境のせいだろう!と、私は思います。
タメイン問題
このタメイン問題、もう大嫌い!!ミャンマーの文化は好きだし尊重していますが、このタメイン問題だけは我慢なりません。
くわしくは、以前書いたこちらのブログを参照。
まとめると・・・
・タメイン(女性用の巻きスカート)は不浄。女性の生理はマジ汚い。
・だから、男がタメインを触ったり、タメインが干してある下を通ると徳が下がる。
と、ミャンマー人はマジで思っています。タメインは、本当に汚いもの(誰かが道に吐いたゲロレベル)の扱いを男性から受けます。
ブッダが言ったことだから
「それが自然の事実だ」
ミャンマーのジェンダーを考える際に欠かせないのが、仏教です。仏教では、男性が上で女性が下と信じられています。たとえば、出家できるのは男性だけ。女性は僧侶にはなれず、ティラシンとして修業をすることになりますが、ティラシンは在家という位置づけです。女性のほうが悟りへの道が遠いんです。
スタッフいわく、「女性でも悟れる。でも、悟りの直前に、ものすごい苦痛を味合わないといけない」とのこと。なんで?ブッダが言ったの?ブッダは男なのになんで知ってるの?などと私は怒るのですが、「それが、自然の事実だ」と。(「自然」なんて、フェミニズムではNGワードだぞ!)
「来世は男に生まれますように、と皆願うけど、女に生まれるように願う人を聞いたことがない」というスタッフ。だから、もう!!!!
ブッダが言った=絶対に正しい
ブッダが言っていること、坊さんが言ったこと、仏教で言われていることは、敬虔なミャンマー仏教徒にとっては、すべて事実!世界の真理!なんです。
大学生のときに、ヤンゴンの仏教大学に留学していたことがあります。そこで先生に「なんで仏教は女性が下に位置付けられているのですが?」と質問したことがありますが、「ブッダがそう言っているからよ」の一言で終わりました。大学でこの回答ですよ。全く何も疑問を持っていない先生を見て、ここではこの議論は無理だ・・・と知りました。ちなみに、その先生はティラシンです。女性として出家を目指して修行されている中で、疑問に思うこともあるだろうと思って質問したのですが。
今はまだ難しいけど・・・
改めて、ミャンマー人相手にジェンダーを語ることが困難だと気づきました。日本では、女性がかなり生きづらさを実感してきているけど、こちらはまだ女性たちも「それが自然、事実、真理」と受け止めてしまっています。
実際、普段の生活で、女性だから嫌な思いをすることは、日本より少ないと思っています(私が外国人だから優しくしてもらえてるのもあるはず)。ミャンマーの男性、優しい人多いもんね。
今回喧嘩しているスタッフの娘世代が生きやすくなるように、ミャンマーでもジェンダーに関することをやっていきたいけど・・・今は全く手が出せません。ミャンマー人フェミニストも少なく、フェミを語る言葉がまだあんまりないんじゃないかな。
今はまだ怒っている段階。これからもう少し、ミャンマーのフェミニズムについても勉強して、いつかジェンダーに関する活動もできるようになっていきたいと思います。
こんなイベントがあったらしいです。素晴らしいイベント!例のスタッフを連れていきたい(笑)。タメイン問題についてもよくまとめてあるブログです。