ミンガラーバー。
地球市民の会ミャンマー駐在員の鈴木亜香里です。
先日(6月27日)、モスト・シグニフィカント・チェンジ(MSC)手法のセミナー(入門編)に参加しました。オンラインセミナーで、5000円のところ先着10名様は2000円に!ということで、参加してみたのです。団体内に共有すると同時に、せっかくなのでブログにも書こうと思います。
モスト・シグニフィカント・チェンジ(MSC)手法について知りたい方、評価について学びたい方にお勧めです。入門編です!
モスト・シグニフィカント・チェンジ(MSC)手法とは
MSC(モスト・シグニフィカント・チェンジ)は、欧米のNGOが使っている参加型・質的評価手法です。1990年代にリック・デイビース博士によって考案されました。日本では、参加型評価センターが普及に力を入れています。
詳しくは、このページに書いてあります。また、このページに貼ってある「MSC手引き」をダウンロードして読み込めば、MSCについてはだいたい理解できます。「知りたきゃ黙って3回読め!!」です。(まだ私1回しか読んでないけど)
MSC(モスト・シグニフィカント・チェンジ)手法とは何か? - pecenter ページ!
MSCについて、すでにまとめられていることをこのブログに書き直しても意味がないので、私が入門編に参加して学んだことを、私なりの言葉で解説したいと思います。私というフィルターを1回通ってます。入門編に出ただけで、まだ実践もしていないので、理解にずれがある可能性もありますのでご了承ください。
日本でMSCと言えば、田中博先生
日本では、田中博先生がMSCの普及の第一人者です。今回私が参加した研修の講師ですね。田中先生は、以前ミャンマーにも来られていて、地球市民の会のローカルスタッフもミャンマーでのMSC研修に参加しています。JICAなど、いろいろなところで参加型評価の研修をされているので、お会いしたことがある方も多いのでは?
田中先生のブログ(「ミャンマーから参加」って、私のことも書いてある!)
MSC入門オンライン・フルバージョン研修成功裏に終了(6/27) : 参加型評価で改善!のブログ
物語を集めて、選んで、フィードバックする
MSCがやることは、主に3つ。
- 物語を集める
- 一番重要な物語を1つに決める
- その物語を選んだ理由をフィードバックする
例えば、NGOの活動を想定してみましょう。3地域で、生活向上のプロジェクトをしたとします。で、その事業の評価をMSC手法でやるとします。
物語を集める
各地域の村の人に話を聞いて、物語を集めます。「この1年間で、あなたにとって最も大きな生活の変化は何でしたか?」と質問をします。
1年間のところは、3か月とか半年とか、評価したい期間によって変わります。また、今回は生活向上プロジェクトのため「生活の変化」について聞いていますが、評価したい事業の内容によってテーマも変わります。
村の人から、できるだけ詳しく物語を聞き出します。ディティールが大事。いろんなエピソードが出てくるかもしれませんが、「最も大きな・最も重要な」物語一つに絞ってもらいます(Most Significantですね)。
最も重要な物語を1つに決める
スタッフが村人から聞いた物語が集まってきます。プロジェクト地域は3つなので、3か所の村人がいろんなエピソードを出してくれているはずです。次のステップは、これらの物語から1番を決めることです。
複数の物語の中から1番を決めるのは、村の人でも、NGOのスタッフでも、NGOのトップマネジメントレベルでもできます。ただ、村の人だと大変、スタッフでも人数が多いと大変になるとのこと。世界中で活動するような大きな団体になると、各国の1番の物語を各国のマネジメントレベルが決めて、最後に世界全体の1番の物語をトップマネジメントレベルが決めるということもあるそうです。物語の勝ち抜きトーナメントみたい。4~8個の物語から1つを選ぶくらいのイメージです。
実際の例を見るとわかりやすかったのですが、物語はいろいろです。ポジティブな変化もあれば、ネガティブな変化もあります。「プロジェクト目標を達成したかという視点で見ると、この物語が良い」とか、「持続可能性を考えるとこれかな」とか、「このネガティブな変化は見逃せない」など、選択の過程でいろいろな話し合いをすることになります。
「一つになんて決められない!」と思いそうになるのですが、それでも1つに決めるのが、Most Significant Changeなのです。
その物語を選んだ理由をフィードバックする
無事に1つの物語に決めたら、それで終わりではありません。評価なので、フィードバックが大事。なぜこの物語が選ばれたのか、丁寧にフィードバックしていくことで、マネジメント層の価値感や大切にしたい考え方などが下の層にまで伝わっていきます。
自分の出した物語が1番に選ばれなかったら悲しくなるかもしれませんが、丁寧にフィードバックをし、「どういう変化の物語が求められているか」がわかれば、下の人も活動を改善することにつながっていきます。
評価というより、学びの要素が強い?
評価というと、「このプロジェクトが良かったか悪かったか、判断をされる」 という風に考えてしまいがちです。マルバツを付けられるみたいなイメージですね。人は誰でもよい評価をしてもらいたいので、「ポジティブな物語を探さねば」という気持ちになりがち。
でも、MSCは「良し悪しの判断をする」というよりは、「学習と改善のためのアプローチ」です。(そもそも、評価は改善するためにやるものなんですけどね。どうしても、評価されると思うと身構えてしまう・・・。助成金もらってやる事業なんて、よい評価ついてナンボですからな。ダメ事業と評価されたら終わる・・・)
もしかしたらネガティブな変化が一番に選ばれる可能性もあります。MSCに選択基準なんてものはなくて、皆で話し合って選択基準を作っていくこと自体がMSCに組み込まれています。なんだかとっても、ワークショップ的!
私は、ミャンマーのローカルスタッフと一緒に実施できそうだと考えています。まず、村から変化の物語を聞き出してきて、ローカルスタッフと一緒に1番を決める話し合いの会をやりたいな。そうすれば、「地球市民の会のミャンマー事業は、何を大事にしていきたいか」という点が見えてくる気がする。まるで、団体理念や価値感を作るワークショップのようになりそうです。
セミナーに参加すると理解が進む
冒頭で紹介したwebサイトを見たり、「MSC手引き」を見ればほとんどのことは書いてあります。セミナーでも、MSCについての解説は「あー、それ手引きに書いてあった」と思うのがほとんどでした。
セミナーに参加して良かったと思ったのは、事例を使って実際に物語を選ぶ作業ができたことです。一つのプロジェクトについて書かれた4つの物語を読んで1番を決めるのですが、どれもそれぞれ重大な変化であり、決めるのがとても難しかった!(事例は外に出したらNGなのでブログには載せられません。)
演習をやってみることで「手引きに書いてあったのはこういうことか!」と理解できました。手引きだけだとイメージしづらいので、興味を持たれた方はセミナーに参加されるのが良いかと思います。入門編だけではなく、中級編などもあるみたいです。詳しくは、一般社団法人参加型評価センター - pecenter ページ!をご参照ください。