ミンガラーバー(ミャンマー語でこんにちは)。
現地駐在員やりながら、団体のファンドレイジングも頑張っています、鈴木亜香里です。
今日は、「人は何故、寄付をするのか」について考えてみたいと思います。ファンドレイジングの教科書などには、「共感×納得+信頼=寄付」と書いてあったけど、本当にそれだけかなーと思ったので。
共感×納得+信頼=寄付
教科書でよく言われているのがこれです。
人が支援しよう!と思い至るには、まずは社会の課題について「かわいそうだなあ」とか、あるいは活動について「いいなあ」と共感してもらい、そこから、その団体の活動の内容について「なるほど」と納得してもらい、そして「信じて託す」ことで寄付という行動になるという考え方です。
寄付をする人の心理〜3つのステップ〜 | ファンドレイジング・ラボ
こういう考え方に基づくと、寄付を集めるためには
共感:社会的課題をストーリーで示す
納得:その課題に対する団体の活動を示す
信頼:信頼に足る団体だということを、活動報告や会計報告で示す
みたいな広報が必要になってくるらしい。
でも、本当にこれだけで人は寄付するのかな・・・という疑問があります。「良い活動をされてますね」などと言われることは多いですが、寄付までつなげるのは本当に難しいです。もっと共感度や納得度を上げる打ち出し方をしていく必要はあるんでしょうけど。
そこで、自分が寄付するときに何を考えているか、当会を支援してくださっているドナーさんたちが何を考えて寄付を決めたのか、考えてみました。
寄付をするさまざまな理由
その団体のミッションに共感したから
上記の「共感×納得+信頼=寄付」と同じですね。まさに王道の寄付理由です。でも、これが理由で寄付を決めた人って、実は少ないのではないかと思っています。
誰かの役に立ちたい
「何か良いことをしたい」という気持ちで寄付してくださる方。団体に共感している場合もありますが、団体の活動は深く知らずに、なんとなく知っている団体だから、有名だから、ミャンマーだから、などという理由で団体を選ばれる場合もあります。寄付者の寄付したい気持ちが高まったときに、運やタイミングの関係で自団体を選んでもらえた場合ですね。
災害支援の場合もここに当てはまりそうです。災害のために何か支援をしたいけど、どの団体にしたら良いのかよくわからない。調べる時間もない。活動内容を詳しくは知らないけど、自治体、たまたま名前を聞いたことがある団体、テレビやネットで見た団体に寄付して、ホッと一安心。私も日本国内の災害支援のときは、こういうパターンです。
自分もそうだったから
団体のミッションや活動に、自分の実体験を重ねて共感してくださるパターン。奨学金支援で、さとおやさんからさとごへのお手紙の中で書いてあるのがこちら。
「自分が子どものとき、周りの人に支えられて勉強をすることができた。だから、あなたを応援したい」
「自分が子どものとき、お金がなくて勉強ができずに悲しかった。だからあなたを支援します」
というもの。こういうお手紙はマジで沁みます。翻訳していて嬉しい気持ちになります。
その人がいるから
友人・知人などで、「あなたの団体だから」と言って寄付してくれる人がいます。団体の活動内容はあまり把握していないけど、団体スタッフや理事を信頼して応援してくださる方です。本当にこれはありがたくて嬉しいですね。
「お世話になったんで」みたいな感じで、何かのお礼として寄付をしてくださる方もいます。その人も、だいたい活動内容は把握してないです。でも嬉しい。
周りに寄付したカッコいい姿を見せたい
日本人はこれは少ないと思いますが、ミャンマー人はけっこう多いです。後輩と飲みにいって、後輩に良い恰好をしたいから奢る的なイメージです。「ここは出しておかないと恥ずかしい」という気持ちで、寄付をする。それだけ寄付文化が根付いているということでしょう。
また、日本の支援者さんでも「寄付をする親の姿を子どもに見せたい」とおっしゃっていた方もいました。ミャンマーに学校を寄付してくださり、落成式に娘さんを連れてきて「ママはすごいことをしているね!」と言われてとても嬉しかったんだとか。
勉強の意味で
スタディーツアーに参加するという場合。これは本当に勉強になるし、人生変わるほどのインパクトを受ける場合もあります。オススメ。
奨学金のさとおやさんの中にも、お金を払うのは親ですが、さとごとの手紙のやりとりはお子さんにさせている方もいます。世界のことをもっと広く知ってほしい、英語で手紙のやり取りをすることで英語に興味を持ってほしいという気持ちですね。
私も勉強目的の寄付はよくやります。他団体のファンドレイジング方法や支援者に対するフォロー方法を知りたいから寄付する。寄付する人の気持ちを知りたいからやる。その団体のミッションに共感、活動に納得というより、取り組みが面白いか、最先端かどうかに注目している気がします。
私が最近した「インパクト投資」も、このカテゴリーに入ります。
厄除け的な意味で
実は、私が一番やっているのが、この「厄除け寄付」です。
2年ほど前、スタッフがバイクの交通事故で亡くなりました。その後も、スタッフの交通事故やケガが重なり・・・。大半は大したことがなかったのですが、中には入院しないといけないほどの人もいました。
こういうとき、ミャンマー人は「お坊さんを呼ぼう」となります。お坊さんに寄進をし、厄除けの意味があるありがたいお経を読んでいただきます。お坊さんを呼ぶと決めたあとのスタッフたちの団結力と行動力はものすごかった!普段の仕事より真剣やったやろ!!と言いたくなるくらい(笑)
お坊さんにお経を読んでいただいた後は、スタッフの不幸がぴたっと治まりました。気のせいかもしれませんが、それでも良いんです。それから私は「月に1回は何かに寄付をする」と決めて実践しています。多くはミャンマー内での「格好つけ寄付」で、イスラム教のイベント時にモスクに寄付する、当会が支援しているタンボジセンターの子どもたちに差し入れをする、みたいな小さいことです。スタッフ皆で、学校に行けない子どもに奨学金をあげたりもしています。ただ寄付をするだけで、自分や家族の安全が保たれるので、本当にありがたいことです。
スタッフ皆で奨学金をあげたときの記事はこちら(旧ブログ)。
まとめ:団体が思うほど、寄付者は活動に興味がないのかも!?
団体的には、教科書通りに「まずは共感!!そして納得、最後にダメ押しの信頼」などとやるんですけど、いくら団体が頑張ったところで、寄付をするかを最後に決めるのは寄付者の方。「共感×納得+信頼」をわかりやすく示すのは当然のこととして、他の理由にもきめ細かく対応できる団体が、寄付を集めていけるのかなーと思います。
たとえば、
カッコつけ寄付者のためには、感謝状とか、子供からの感謝の手紙、看板に名前を入れるなどをして、シェアする。その寄付者が、周りの人に自慢したくなるようなツールを作る。
勉強目的寄付者のためには、スタディーツアーや奨学金などで、学べるツールをたくさん準備する。面白くて新しい支援スタイルを提案する。このブログも、勉強目的な意味も込めてます。
厄除け目的の人には・・・何をしたらいいんだ??(スタッフから厄除けのお祈りをするとか?)
逆に、「寄付は全額支援に使ってほしい。こちらのフォローは何もしなくて良いから」とおっしゃる方もいらっしゃいます。どちらかというと、都会の人にそういう考え方の方が多いイメージ。そういう考えの方に手厚すぎるフォローをすると、逆効果になってしまいますね。
奨学金支援をしてくださっている方の中には、「事務局にもさとごにも、負担がかかるといけないから」と言って、手紙のやりとりを辞退される方もいらっしゃいます。事務局は確かにちょっと大変ですが、さとごたちは本当に手紙を楽しみにしているので、遠慮されないでくださいね!翻訳ボランティアさんもいるし。
活動をしっかりして、それを発信するのは当然のこと。プラスアルファで、支援者さんに満足していただけることをやっていきたいと思います。うちの団体は小さくて支援者さんもまだまだ少ないですが、きめ細かいフォローをやっていくためには、そこは強みになると思っています。事務局員は、寄付者さんの名前を聞いたら、だいたいどういう方かを把握できています。寄付者が何万人もいる大きな団体だったら、絶対に無理でしょう。小さい団体に寄付するのも、そういう意味でオススメです。