NGOミャンマー駐在員のハリキリノート

ミャンマーのタウンジーという町で、国際協力をやっています。NGO活動、ミャンマーあれこれ、国際結婚育児ネタなど

ミャンマー農業関係者必見!オーガニック生産者団体報告会レポート

ミンガラーバー。

ミャンマーのシャン州南部で、有機農業を広める活動をしている鈴木亜香里です。

 

2020年1月30日に、ピンダヤに行ってきました。ピンダヤ地域の農民団体が、活動報告会をするとのことで聞きにいったのです。報告会の後にはワークショップもあり、オーガニック農業をやっている農家さんたちの意見や現状を知ることができました。なかなか面白かったので、ブログでシェアしたいと思います。

 

今回のブログは

  • ミャンマーに農業関係で進出したい企業
  • ミャンマーの農村開発NGO
  • ミャンマーの農村研究をしている人
  • ミャンマー好き

にオススメの内容です。もちろん、上記に当てはまらなくても私のブログのファンのあなたは読んでね☆

 

Golden Ground報告会

2020年1月30日8:00より、ピンダヤの町中にある「インレーイン」というホテルで報告会が開催されました。

(実際に開始されたのは、8:45。タウンジーから2時間かかるので、6時に出発して行ったのに待たされた!ミャンマーあるあるです)

 

報告会に参加したのは、ダヌ自治区の事務局長、ピンダヤ地域の農業省、NGO、地元CSO、オーガニック農業を実践している農家など。50名以上が参加していました。

 

舞台上に大勢が並んで記念撮影をしている

全員が一度におさまらず、3回写真撮影をしました。

 

ピンダヤ地域とは

わかりやすくピンダヤ地域と書きましたが、報告会では「ダヌ自治区」というくくりで語られていました。ダヌ自治区は、ダヌ族がたくさん住んでいる地域です。ピンダヤタウンシップとユアンガンタウンシップという2つのタウンシップから成り立っています。

 

ダヌ自治区の主な作物

有名な作物は、山地ではお茶やコーヒーです。ピンダヤのお茶は、お茶好きには有名なブランド産地です。ユアンガンは、近年コーヒーのブランド産地となっています。ジーニアスコーヒーの加工場もユアンガンにあります。

 

平地では、トウモロコシ、キャベツ、カリフラワー、じゃがいも、ピーナッツ、菜の花などが多く植えられています。上から見ると、パッチワーク状の畑がとてもキレイです。野菜の多くは、ヤンゴンやマンダレーなどの大都市に出されています。

 

ダヌ自治区とインレー湖との関係

ピンダヤ洞窟が外国人にも有名な観光地となっています。インレー湖から2時間弱で行けるため、インレー湖観光と組み合わせて楽しむ方が多いです。

洞窟パゴダの入り口の写真

ピンダヤ洞窟の入り口

 

ピンダヤは、インレー湖より標高が高いところに位置します。ピンダヤ地域から、土砂が大量にインレー湖に流入しています。農業が盛んな地域であるため、化学肥料を大量に含んだ栄養過多の土砂がインレー湖に流れ込み、インレー湖の富栄養化を進めてしまっています。また、ピンダヤ地域では農薬や除草剤も多く使用するので、インレー湖への影響が心配です。

インレー湖への環境問題については、こちらの記事をご参照ください。

www.ngomyanmar.com

 

Golden Groundとは

この報告会を主催したのは、Golden Groundという団体です。ミャンマー語では「シュエミージー(金の土地)」という名前です。

パワーポイントにロゴが投影されている。講演している女性

ゴールデングラウンドのロゴ

ダヌ自治区の人たちを対象に、オーガニック農業を普及したり、オーガニック作物の販売先を見つける活動をしています。

2年前(2017年)に発足。

スタッフは現在7名とのこと。

ピンダヤ10村、ユアンガン10村で活動を展開し、GGのグループメンバーになっている農民は100名以上いるそうです。

会社なのか、CSOなのか、ローカルNGOなのか、組織の形態はよくわかりませんでした。

 

Golden Groundの活動内容

報告会で話されたGGの活動内容は以下の通り。いろいろ頑張ってやっているねという印象でした。

 

・オーガニック農業の研修を村に対して実施

(土着菌、ボカシ、木酢液、発酵液等)

政府組織や他団体と協働してい研修を実施することもある。

 

・キャパシティービルディングの研修

PGSという国内認証の取得を支援しており、すでに100名以上の認証取得者がいる。

額の中にPGS認証の証書が掲示されている

PGS認証

・オーガニック商品の販路開拓

(韓国、日本、シティーマート等)

スライドの画像。

販売先。契約販売を推進しているらしい。

・契約栽培の推進

 

・タウンシップ、州、国レベルでのロビイング活動

 

Golden Ground 2020-24の戦略

これまでの2年間の活動をふまえ、続く5年間の戦略は以下の通り。この戦略はまだ決定ではないので、参加者からいろいろとアドバイスをもらいたいとのこと。

 

1 GG内部とオーガニック農家に対して、組織力と事業力をつけるキャパシティービルディングを行う。

 

2 農業だけでなく、オーガニック農家の生活全体を向上させるアプロ―チをとる。特に、ジェンダーや障碍者に配慮をする。

 

3 オーガニック農家の権利と政治的参加のために、ロビイング活動を行う。

 

戦略に意見を出すワークショップ

報告会が終わり、軽いコーヒーブレークをとったあとは、4つのグループに分かれたワークショップとなりました。上述のGGの5年戦略に対して、意見やアドバイスをしてくださいという内容で1時間程度、グループ内で話し合いました。その後、4つのグループの代表が前に出て、グループで話し合った内容を全体に報告しました。

 

多くの人が机の周りに座ったり、立ったりしながら話し合いをしている様子

各テーブルに分かれて話し合い

「戦略に対するアドバイスをしてください」というお題は、なんか変ねぇとも思いましたが、同じグループに振り分けられた農家さんの生の意見をヒアリングできたので良かったです。

 

ワークショップでは、いろいろな意見が出ました。実現可能性や、誰がやるのかという点は置いておいて、皆が欲しいと思っていること、必要だと思っていることです。以下、出てきた意見を私なりに整理しました。

 

キャパシティービルディング

農家に対する様々なキャパビルが必要。

  • 農業技術(植える時期の指導、新しい自然の農薬、収量をあげる方法等)
  • コストと利益の計算
  • 記録をとること(植え付け日、収穫日、堆肥を入れた日・量など)
  • オーガニック認証取得の手伝い
  • 新規作物の導入
  • 加工技術、保存技術
  • 先進地視察
  • やる気のある人に対する上級者研修
  • 役所に怖がらずに行けるように(農家は政府が怖くて役所に行けず、必要なサービスが受けられないことが多い)

 

インフラ面

  • 道を良くしてほしい(出荷が大変)
  • 加工設備・保存施設が必要
  • 農地を検査してほしい(残留農薬、重金属等。農家は検査代が高くて出せない)
  • オーガニック野菜を販売する店を地元に欲しい(宣伝のために)
  • 保育園や学校など、農家の子どもが教育を受けやすくしてほしい(今は村に学校がなく、遠くの僧院に行かせている)

 

販売面

  • 高い値段でたくさん買ってくれる、長期で買ってくれる販売先が欲しい(外国)
  • 契約栽培で、決まった価格で買い取ってほしい
  • 契約した価格よりも市場価格が上がった場合、契約を改定してほしい

 

政府制度

  • 認証をとる際に土地の登記が必要だが、土地登記の役所がちゃんとやってくれなくて困る
  • オーガニック認証制度を整理してほしい(農業省)
  • 外国企業が活動しやすいように、書類仕事などを簡素化してほしい

 

前に立ち、発表する人物。後ろには文字がびっしりの模造紙。

グループごとの発表の様子

まとめ・感想

ワークショップでは、農家さんの現状や考えを聞けたので、とても勉強になりました。以下、私が感じたことです。

 

契約栽培に対する農家の考え方

外国の企業が何を考えて、どう行動するのかを全く想像できていないと感じました。例えば、「高い価格で買ってほしい」「契約通りの金額で買って欲しいが、市場価格が契約価格より上がったら、高いほうの価格で買ってほしい」など、自分勝手な意見を当然のように農家は言ってきます。

企業には、農作物を必ず全量買うことを要求しますが、企業と契約した量・品質のものを農家が出せる保証はありません。農業技術的、天候、農家の意識(農薬を撒いちゃう)などの問題があります。

 

企業は、利益が出れば買うし、利益が出ないならば買わないと思いますが、そこが農家さんはあまり理解できないようです。企業だって、担当者がやりたいと思っていても、利益が出ないなら社内から反対されて撤退せざるをえないことも多いし、事前に量がわからないと販路も確保できないとか、そういうことが全く想像できない。知らないのだから当たり前ですが。政府とのやりとりで企業がめちゃくちゃ苦労することなども農家側は知りません。

もし、ミャンマーの農家と組んで仕事をするなら、企業と農家のコミュニケーションをもっと良くすることが必要だと感じました。「契約栽培とは何か」「企業は何を考えて買いに来るのか」など、しつこいくらいに伝えていく必要があります。

 

受け身な農家

農家にとって「売り先は誰か(政府やNGO)が探してくれるもの」という意識です。自分で売り先を探すという考えにはまだ行けておらず、受け身な印象。民主化以前の、偉い人に従うという考え方がなかなか抜けません。また、国際NGO等による「援助慣れ」的な感じもあるのかもしれません。

教育レベルの向上や、インターネットから情報を探す技術等の向上が望まれます。農家さんには「自分たちでできる!」という自信をもっと持ってもらいたい。

 

ダヌ自治区の特徴

私は、普段はパオ族やインダー族、シャン族の村と関わることが多く、ダヌ地域についてはあまり詳しくありません。今回、パオ地域と違うなと感じたのは、「出稼ぎが少ない」とのこと。シャンやパオはタイ等に出稼ぎに行きまくっていて、農業をやれる若者が減って困っている村がたくさんあります。しかし、ダヌ族は出稼ぎにはいかないとのこと。

また、ケシ栽培もないとのことです。ケシを植えるには見晴らしが良すぎるし、周りに大きな町がたくさんあるので抜け道がない。

 

ダヌ自治区は、シャン州南部の他の土地に比べて、土地が肥沃で広い印象。周りに大きな町があるので、販売もしやすい。なので、農業である程度稼ぐことができ、外国に出稼ぎに行く必要がないのかな・・・と感じました。

 

 

おまけ:ピンダヤで出会った面白いもの

報告会終了後、GGの事務所に遊びに行きました。そこで出会った面白いもの紹介です。

 

黒もち米

黒いもち米で、ミャンマー語では「ガチェイ」と言います。「健康に良い」と中国人は好んで食べます。ごはんを炊くときに少し混ぜて炊いてもいいし、蒸してココナッツミルクとあえてデザート的に食べたりもできます。うちの夫も好きなので買いました。Green Hillで販売する用にも買いましたので、ヤンゴンの方はぜひ試してみてください!オーガニックです。

黒いもち米が入った袋

黒いもち米

黒ニンニク

黒ニンニクを試しに作ったというので味見させてもらいました。発酵されていて、美味しい。黒ジューミッ(ニラ系)もありました。韓国企業が買いたいと言っているので、試しに作ったとのことです。

プラスチック容器2つの中に、黒ニンニクが入っている

黒ニンニク

 

他にもいろいろ面白いものを試験栽培していました。楽しかったです。

地球市民の会も、GGに負けないように頑張って活動していかなければなりませんね!

 

地球市民の会は、ミャンマーの農村開発を行っています。ご興味のある方はこちらより

↓ ↓ ↓

www.terrapeople.or.jp

 

この記事は、ミャンマー国内でいろいろ頑張って活動している人の情報が、日本で必要としている人のところに届いたらいいなという気持ちで書きました。読みにくかったかもしれませんが、最後までお読みいただき、ありがとうございました!