NGOミャンマー駐在員のハリキリノート

ミャンマーのタウンジーという町で、国際協力をやっています。NGO活動、ミャンマーあれこれ、国際結婚育児ネタなど

インレー湖の環境問題を、わかりやすく解説するよ!

ミンガラーバー(ミャンマー語でこんにちは)。

ミャンマー駐在9年目の鈴木亜香里です。

 

私の住むシャン州南部には、「インレー湖」という有名な観光地があります。前回、インレー湖観光の基本情報についてまとめました。

www.ngomyanmar.com

 

ただの観光客であれば、ただ「景色きれいだなー」「インダー族の暮らしほのぼの~」でよいかもしれません。でも、インレー湖についてもっと知りたいならば、環境問題のことは避けては通れません!もしかしたら、インレー湖の美しい景色も、あと数年で無くなってしまうかもしれないんです。

 

私の所属する地球市民の会では、インレー湖の環境を守るために植林活動や環境教育など、さまざまな事業を行っています。また、大学の先生たちと協働で、インレー湖の環境調査も実施しています。ということで、インレー湖の環境問題について、数回にわたってまとめていきたいと思います。観光に行く前に、ぜひ読んで、学びを深めてください。

 

水質汚染 

インレー湖の水質汚染は、さまざまな要因が絡まりあって起こっています。私は専門家ではないので、ちょっと不正確な記述もあると思いますが、雰囲気をつかんでもらえたらと思います。

 

有機物汚染

家庭から出る排水に含まれる有機物で湖が汚染されることを言います。インレー湖でも、有機物汚染は多いです。湖上生活をする人たちは、台所の排水、風呂の排水、洗濯の排水も全部、湖にそのまま流していることがほとんどです。風呂(というか水浴び)や洗濯なんて、湖に直でやっています。

湖上の人たちだけでなく、周りの山の上に住む人たちや、タウンジーの町に住む人たちが出す生活排水も、最終的にはインレー湖に流れ込んできます。観光客が来ることによって、ホテルやレストランからも排水が出ます。きちんと処理できているホテルはほんの一部です。

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インレー湖で水浴びをする人。洗濯も水浴びと一緒に済ませることが多いみたい。

 

富栄養化

肥料や生活用水から流れる窒素、リンが湖に流れ込んでくることを言います。インレー湖では、浮き畑農業が盛んです。トマトやひょうたん、ナスなどの野菜をたくさん育てています。浮き畑では、化学肥料を使用しています。雨が降れば、化学肥料をふくんだ土が、湖の中にどんどん入っていくことになります。

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浮き畑

原因は、浮き畑だけではありません。インレー湖のまわりを囲む山の上では、農業が盛んにおこなわれています。100年前までは森がたくさんあってトラがいたほどだったのに、今ではイノシシすらいないハゲ山になってしまっています。木を切ったり、焼いたりして土地を開き、どんどん農地にかえていっています。そして、農地では化学肥料をたくさん使っています。

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インレー湖の周りにある山。木がほとんどないハゲ山。勾配も急なので、土砂が流れやすい。

雨が降ると、山の上の農地から大量の土砂がインレー湖に流れ込んできます。それとともに、肥料に含まれる窒素やリンもどんどんインレー湖に入ってきます。湖には、窒素やリンと言った栄養素が増えすぎて、「富栄養化」という状態になってしまいます。

 

富栄養化になると、ホテイアオイが大量に発生します。植物にとっての栄養がたくさんあるので、大きくなるんですね!ホテイアオイが増えすぎると、インダー族の足であるボートが通れなくなることがよくあります。また、ホテイアオイが枯れて腐ったあと、ヘドロになって湖底に沈殿していってしまいます。

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ホテイアオイが大量発生して、船が通れなくなっているポイント。

 

有害物質汚染

上述のように、浮き畑や、インレー湖の周りの山の上では農業が盛んです。農薬や除草剤を大量に使用しています。その農薬や除草剤は、雨と一緒にインレー湖に大量に流れ込んできます。

特に、インレー湖のトマト栽培は「農薬を大量に使わないとできない」と農家が思い込んでおり、たくさんの量を使っています。農薬を撒いている途中に意識が遠のく人もいるらしいです。日本では規定の量をしっかり守って農薬を散布すると思いますが、こちらには規定量もない、わからない状態です。「たくさん撒けば撒くほどよい」と思っている節があります。多くの農家は、販売用の野菜と自家消費用の野菜は別に作っています。販売用にはたくさん農薬を使用し、自家消費用には農薬を少ししか使用しないそうです。

 

また、インレー湖上の銀細工工房では、銀を抽出するために化学物質を使っています。織物工房でも、染色をやっています。そこから出る排水がきちんと処理されているのか、心配なところです。

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織物工房で、染色した糸を干しているところ。

 

病原性微生物汚染

湖上生活者のトイレは、まだまだナチュラルトイレなことが多いです。少しでも陸地があれば、浄化槽を設置できるそうですが、いつも水の上に生活している人はなかなか設置が難しいそうです。また、年間を通して湖の水位がかなり上下するため、浄化槽が水没してしまうこともしばしば。ということで、写真のようなナチュラルトイレがまだまだ残っています。

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赤いトタンの壁のところがトイレ。下にパイプも何もないのがわかりますか

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トイレを中から撮影。竹の間からブツを下に落とすようだ。

大腸菌の汚染はかなり深刻なレベルにあり、日本の基準では「水浴びに適さない」レベルだそうです。インダー族の人たちは、余裕で湖の中で水浴びしまくっていますが、大丈夫なのか心配になってきます。食器も、湖の水で洗って、最後のすすぎだけはきれいな水を利用する場合が多いとのこと。

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湖の水で大腸菌の簡易テストを実施。めっちゃ大腸菌がいる。

 

ゴミや土砂による汚染

ゴミ汚染

プラスチックをたくさん使う生活になってきたため、ゴミが増加しています。観光客が入ってくることによっても、ゴミは増えます。焼却炉等もなく、ゴミをゴミ箱に捨てる習慣もないため、湖上にゴミが漂っています。

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ホテイアオイとゴミ

 

土砂の流入

上述のように、インレー湖の周りの山がハゲ山になっています。そのため、雨が降ると大量の土砂が流れ込んできます。土砂流入により、インレー湖は年々浅くなってきています。浅くなりすぎて、ボートが通れなくなる通船障害も、水位が下がる暑期にはよく発生しています。

 

雨季には土砂がたくさん流れ込んでくるので、インレー湖の透明度も下がります。濁ってしまうので、湖上の村の人は「雨季は湖で水浴びや洗濯ができない」と言っていました。

 

また、湖の水の量が減ることで、水質汚染の濃度が高まります。汚染物質が大量の水で薄まればまだよいのですが、水が少ないと濃いままになってしまうからです。

 

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山から流れてくる川。乾季はほとんど水がなくなるが、雨季は水量が増える。土がたくさん混ざっているので濁っている。砂利を拾う人。

 

 

環境汚染の影響

上述のように、さまざまな要因が絡み合って、インレー湖の環境汚染が進んでいます。生態系や、人々の暮らしにも影響が出ています。

昔は人口も少なく、自然が分解できるレベルだったと想像します。でも、今は人口が増えたり、農業のスタイルが変化してきたことにより、自然浄化が追いつかない状態になってきているようです。

 

生態系への影響

富栄養化によってホテイアオイが大繁殖しています。ホテイアオイは湖の上にプカプカ浮かんでいます。そのせいで、湖底まで太陽の光が届かなくなります。湖底に生えている水草は、光合成ができなくなって枯れてしまいます。水草の種類や分布状況は、かなり変化したと思われます。

 

京都大学が行った調査によると、インレー湖の魚の中で、外来魚が40%を占めていたそうです。地元の人に聞いてみても、昔よく見た魚がいなくなって、新しい魚が増えたということを聞きます。環境の変化により、魚の種類も変わっていっているようです。

 

人の生活への影響

ホテイアオイの大量発生、土砂の流入により、通船障害が起こっています。水の濁りがひどく、大腸菌も多いので、飲用はもちろん、水浴びにも適さない水質になってきています。

今後、どんどん汚染が進んでくると、湖上生活できなくなってしまうのではないかと心配です。湖が汚くなると観光客も来なくなるので、観光業で生計を立てている多くの人も生活に困ることになります。

 

インレー湖の不思議

インレー湖の水質調査を実施する中で、CODの簡易調査を行っています。CODは水の中の有機物の量を測る調査で、CODの値が高いほど湖が汚い場合が多いと言われています。インレー湖のCODレベルは、日本の一番汚い湖沼と同じレベルです。

日本の汚い湖沼は、アオコなどが大量発生して、緑色に濁って、においも臭いと思います。しかし、インレー湖は、まだそこまでではありません。乾季は濁りもなく澄みきっているし、臭くもなく、アオコの大量発生もまだ起こっていません。

 

データでは最悪なのに、目でみる限りはとてもキレイなインレー湖。その原因を現在調査中です。まだ詳しくはわかっていませんが、仮説はいくつかあります。

 

・インレー湖は水の流れが速いので、汚れがどんどん流れていく。

・水草が多いので、水草が湖を浄化してくれている。

・インダー族が浮き畑のために水草を引き揚げる。そのときに湖の水をかき回して酸素を供給することになるので良い。

 

とにかく水草が、水質を浄化するのに大きな役割を担っていると考えられます。もし、この水草が無くなってしまったら、一気にインレー湖の汚染が進み、濁った臭い湖になってしまうと考えられます(カタストロフィーシフトと言うらしい)。

 

一度汚くなってしまった湖を、元の美しい状態に戻すのは大変なことです。時間もお金も労力もめちゃくちゃかかります。まだ自然の浄化力が残っている今の時期だからこそ、汚染を食い止める活動をするのが大事だと考えています。

 

 

今日はちょっと難しい話になってしまいました。が、自然やインレー湖の人々の生活がかかった、とっても大事なことだと思います。次回は、環境問題への対策を書きました。いろんな人が、たくさんの活動を行っています。

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