NGOミャンマー駐在員のハリキリノート

ミャンマーのタウンジーという町で、国際協力をやっています。NGO活動、ミャンマーあれこれ、国際結婚育児ネタなど

不思議の国ミャンマーで神隠しに遭った話

ミンガラーバー。

ミャンマー在住10年目、鈴木亜香里です。

 

NGOの現地駐在員として、ミャンマーの農村地域の開発をお手伝いしている関係で、農村によく行きます。そこで遭遇した不思議な話を今日は書きたいと思います。実際に起こった「神隠し」の話です。

 

実際に起こった「神隠し」

Pの失踪

数日前の16時半ごろ、タンボジセンターのセンター長から電話がかかってきました。男子生徒Pが行方不明になっていて、皆で探しているという報告でした。

タンボジセンターというのは、私の所属する地球市民の会が運営する農業センターです。高校生16名が寄宿し、農業を学びながら学校に通う施設です。

クワなどを持って、自然の中で楽しそうな生徒たち

タンボジセンターの生徒たち

その日は高校の授業が早めに終わり、13時半には生徒たちがセンターに戻ってきました。休憩時、Pがふらりと、一人でセンター前の道を歩いて出て行きました。その様子を複数の女生徒たちが目撃しています。

「Pが一人で行っちゃったから、ついて行ってあげなよ」と、女性徒たちは男子生徒Zに言いました。Zは追いかけたのですが、Pには会えず。

「行き違いで、もう戻ったのかな?」と思ったZは、Pのことは忘れて精米所の手伝いをしました。女生徒たちも農作業を始め、「PはZと一緒に精米所にいるんだろうな」と、気にしなかったそうです。

 

そうして数時間後、Pがどこにもいないことに皆がやっと気づきました。センター長に知らせ、皆で大声でPを探します。1時間程度探しても見つからず、日が暮れる時間が近づいてきたので、センター長は私に電話をしてきたのです。

 

最初は、センターでの生活が辛くなって脱走したのかと疑いました。しかし、生徒同士で喧嘩をしたわけでもなければ、学校でトラブルがあったわけでもない。センター長が厳しく叱ったわけでもありません。部屋には彼の荷物がそのままの形で残っています。普段のPの生活態度を見ていると、センターでの生活を心から楽しんでいるように見えたので、脱走というのは考えづらい・・・。

となると、人さらいにさらわれた心配が出てきます。最近、この地域では子どもがさらわれる事件がたまにあるそうです。もうしばらく探してみてダメなら、親に連絡をして、周辺の村にも捜索をお願いする必要があるかなどと、電話で10分程度話し合いました。

 

電話を切ろうとしたところ、「戻ってきた!」とセンター長が言います。なんと、Pが戻ってきたのです。人さらいではなかったことにホッとして、詳しい状況がわかったら連絡してほしいと言って、とりあえず電話を切りました。

 

様子がおかしいP

無事に戻ってきたPですが、森の中をさまよい歩いたかのように、身体中がドロンコだったそうです。そして、出て行ったときには赤い服を着ていたのに、青い服を着て戻ってきました。

 

「どこに行ってたの?」と質問しても「どこにも行っていない、わからない」としか答えません。怒られるのが怖くてはぐらかしているわけではなく、本当にわからないという表情です。

 

センター長を見て「あれは僕たちの先生なの?」と他の生徒に質問したり、自分の両親の名前を即答できなかったり。

「明日はセンターの生徒全員が休むと学校の先生に届けを出してきた」とPが言い出しました。そんな届けを出すのは変ですし、「どの先生に届けを出したのか?」とセンター長が聞くと、「先生の名前を思い出せない」と言います。

 

このように、一部の記憶が少し変になっていました。ただ、学校の勉強に関することは普通に覚えていて、教科書も普通に読めるそうです。

 

霊能力者を呼ぶ

Pの様子が普通ではなく、どうやら「神隠し」に遭ったんだろうと周りは考えました。実は、ミャンマーの農村では、神隠しはよくあることです。ミャンマーでは、「ナッ」という精霊がいると信じられています。良いナッもいれば、悪いナッも、そこら中にたくさんいるのです。

神隠しに遭ったときの対処は、水を飲ませて、お経を唱えさせること。Pにもさせましたが、あまり様子が良くならないので、村の霊能力者に来てもらうことにしました。

 

霊能力者のバイクの音が聞こえると、Pは「逃げなきゃ!」と言って走り出そうとしました。センター長が急いで取り押さえて大丈夫でしたが、不思議です。霊能力者がくれた飲み薬(漢方薬的なもの)も、Pは飲みたがらず。

 

霊能力者いわく、Pはどこかで昼寝をしたんだろう。その場所の精霊が機嫌を損ねてしまった。昼寝をした場所がわかれば、夜中に誰かがその場所に行って、お供えをすればすぐに治る、とのこと。

しかし、Pは自分が昼寝をした場所を全く思い出せません。その場所が思い出せない限りは、お供えすることができず・・・。

 

心配することではない

Pの両親にも連絡して、神隠しの翌日には両親もセンターに来てくれました。両親が懇意にしている僧侶に相談したところ、「慈愛の心を送っておくから、そこまで心配する必要はない」と言われたそうで、ゆったりモードのご両親。「よくあることだから、すぐに治る」と言っていました。

 

とはいえ、Pを一人にしてまた精霊に連れていかれたら困るので、いったん両親と一緒に村に帰って休んでもらうことになりました。幸い、学校は4連休。4日間家で休んだり、僧侶に会いに行ったりして、学校が始まる前に戻ってきてもらうことになりました。

 

まだおかしい

そして4日後、Pはセンターに戻ってきました。お父さんは「良くなった」と言って送り返してきてくれたのですが、どうやらまだおかしい様子。他の生徒が壁に貼っていた時間割表を「目障りだから」と言って、部屋の中で火をつけて燃やしてしまいました。燃やされた生徒は怒って、殴り合いの喧嘩に・・・。以前は全くそんなことなかったのに。

ということで、不思議な力を持っているお坊さんに見せに行くことにしました。お坊さんに見せたときの話は別記事に書きます。こちらよりどうぞ。

 

 

ミャンマーには、まだ不思議が生きている

幽霊

タンボジセンターには数年前から幽霊が住み着いていて、ある部屋で寝ると高確率で金縛りにあいます。少し霊感がある人が言うには、特に悪いことをする霊ではなく、皆と一緒に遊びたがっている男の子の霊だと言います。

実はタンボジセンターの男子生徒で、一型糖尿病のために退寮し、亡くなってしまった子が過去にいました。その子の幽霊がまだ一緒に生活しているのではないかと思います。

 

以前、当会のスタッフが事故に遭うことが続いたことがありました。バイクの事故で亡くなったスタッフの幽霊が、仲間を呼んでいるのではないかと不安になり、お坊さんを呼んでお経を唱えてもらったこともあります。幽霊は身近に存在していると感じます。 

www.ngomyanmar.com

↑厄除け的な意味で、お坊さんに寄付した話が載っています。

 

精霊

精霊(ナッ)はいたるところにいると信じられています。例えば、村の水源にはたいてい祠があり、木を切ってはいけないゾーンとして保護されています。それは、水源にいるナッを怒らせるといけないからです。

 

お坊さん

ミャンマーの中では、仏教は精霊信仰の上位に位置付けられています。精霊にとりつかれたとしても、徳の高いお坊さんに見てもらえば祓えます。

パゴダの前を歩く小坊主

修行を積み重ねて徳を積んだお坊さんには、不思議な力が宿るのか・・・

徳が高くて、亡くなった後にミイラ化したお坊さんも各地にいらっしゃいますね。

ngomyanmar.blog107.fc2.com

タイで洞窟の中に閉じ込められた子ども13人を救出したのはお坊さんの力だと、ミャンマーでは信じられています。

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霊媒師

ナッにとりつかれて踊り狂う霊媒師も存在します。巫女のような存在ですね。そして、霊媒師の多くはオカマさん。ナッガドーと呼ばれています。

ポッパーのあたりがナッガドーの聖地となっていて、年に1回、盛大なお祭りも開催されています。私は行ったことがないのですが、興味のある方は行ってみてはどうでしょう?

 

まとめ

不思議が色濃く残るミャンマーでも、町ではナッの話をあまり聞きません。やはり、ナッは自然の多い農村地域に住んでいることが多い様子ですね。

 

この記事の続きはこちら。

Pだけでなく、私も巻き込まれます。読んでね。

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神隠しが起こったタンボジセンターでは、さとおやさんを募集しています。センターの運営費は、日本のさとおやさんたちからの奨学金でまかなっています。スタディーツアー等で、実際に会いに来ることができる奨学金です。ご興味のある方は、下記リンクをよりお問い合わせください!

terrapeople.or.jp